デービッド・ダンラップ天文台

デービッド・ダンラップ天文台 (David Dunlap Observatory) について

デービッド・ダンラップ天文台（DDO）は、カナダ・オンタリオ州リッチモンドヒルにある市営の天文台です。この天文台は、トロント大学で物理学を教鞭をとっていたクラレンス・チャント教授の長年の尽力によって設立されました。その歴史は、カナダにおける天文学研究の発展を語る上で欠かせない重要な足跡を刻んでいます。

設立の背景

1892年、クラレンス・チャントが会員となったトロント天文学・物理学会は、1902年にカナダ王立天文学会（Royal Astronomical Society of Canada）へと改称されました。チャントは、1904年と1907年に同会の会長を務めました。当時、天文学の研究環境は十分とは言えず、チャントは新たな天文台の建設を強く推進しました。1910年には設置場所が決定しましたが、第一次世界大戦の影響で計画は一時中断されました。

設立への道のり

資金調達は難航しましたが、1921年にチャントが行ったポン・ウィネッケ彗星に関する公開講座が転機となります。この講座に感銘を受けた実業家デービッド・ダンラップは、天文学への関心を深め、チャントの計画に共感しました。1924年にダンラップは他界しましたが、彼の遺志を継いだ未亡人が、天文台の設立に必要な資金を寄贈しました。これにより、長年の夢であった天文台建設が現実のものとなりました。

主要な設備

チャントは、天文台の中核となる望遠鏡の手配を進め、グラブ・パーソンズ＆Co社から当時世界有数の大きさを誇る1.9m反射望遠鏡を購入しました。これは、ウィルソン山[[天文台]]の2.5m望遠鏡に次ぐ大口径で、当時としては非常に高性能なものでした。この望遠鏡は1935年5月に設置され、天文台はチャントの70歳の誕生日である1935年5月31日に開所式を迎えました。他にも、開所当初から運用された50cmカセグレン望遠鏡、150mmクック望遠鏡、1965年には60cmカセグレン望遠鏡が設置されました。

研究活動

デービッド・ダンラップ天文台は、その設立以来、様々な天文学的研究に貢献してきました。1946年から1951年の間には、フランク・スコット・ホッグとヘレン・ソーヤー・ホッグ夫妻が観測を行い、特にヘレン・ソーヤー・ホッグは、トロント・スター紙に連載したエッセイで広く知られるようになりました。1959年から1966年の間には、シドニー・ファン・デン・ベルフによって「David Dunlap Observatory Catalogue」が発表されました。1956年には電波望遠鏡も設置され、観測の幅を広げました。

近年の動向

しかし、2007年には大学が光害を理由に天文台を売却する計画を発表し、議論を呼んでいます。この計画は、長年にわたり天文学研究の拠点として貢献してきたデービッド・ダンラップ天文台の将来を左右する大きな問題となっています。

デービッド・ダンラップ天文台は、その歴史を通じて、カナダの天文学研究に多大な貢献をしてきました。現在、天文台の将来は不透明な状況ではありますが、その歴史と遺産は、天文学史の中で重要な位置を占めています。

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