トイレ用擬音装置

トイレ用擬音装置とは

トイレ用擬音装置は、特に女性用トイレ内の個室に設置され、主に水洗音などの擬似的な音を発生させるために使用される音響機器です。この装置の主な目的は、排泄時に生じる音、いわゆる「排泄音」を隠すことにあります。これにより、排尿や排便、生理用品の交換など、デリケートなシーンでの恥ずかしさや気まずさを軽減することができます。

背景

日本では、多くの女性が自分の排泄音を他人に聞かれることを恥ずかしいと感じる傾向があり、この羞恥心が擬音装置の必要性を高めました。擬音装置が一般的になる以前は、自分の音を隠すために水を流し続ける人も多く見られましたが、これは水資源の無駄遣いや、浄化槽への負担を増やす要因ともなりました。これを受け、擬音装置は水の節約と経済的負担の軽減を図るために開発されました。アメリカや欧州では、排泄中の音を気にする習慣は少ないため、日本特有の文化といえます。

装置の種類と設置方法

トイレ用擬音装置は、洋式便座の一機能として組み込まれる形と、既存トイレに後付けできる壁掛け型の電池駆動モデルがあります。特に壁掛けタイプは、便座が狭い場合でも導入可能で、乾電池を使用する場合はアルカリ乾電池の使用が推奨されています。装置が設置されているトイレには、啓蒙用のポスターが貼られ、ユーザーに水を流さずに擬音装置を活用するよう促されています。

市場での動向

日本では、TOTOやINAX（現・LIXIL）がトイレ用擬音装置の開発と販売を行っています。これらの製品は、公共トイレや商業施設において特に女性用トイレに設置されることが多く、男性用トイレではビデ機能と省略されていることが一般的です。装置はICレコーダーのような技術を用いて音声を再生し、公衆トイレ内での衛生面にも配慮されています。押しボタン操作ではなく、赤外線センサーを使用した機種もあり、利用者が不特定多数の人と接触せずに操作できるよう工夫されています。

経済効果

TOTOの調査によれば、女性400人が利用するオフィスでの水道代は年間約386万円、節約できる水量は551万リットルに達すると報告されています。これは、衛生面や個人のプライバシーを守るだけでなく、経済的な観点からも大きな利益をもたらすことを示しています。

その他の情報

このような装置は、1988年にTOTOが「音姫」として初めて販売した際に名付けられ、その名称は商標として登録されています。1979年には折原製作所から「エチケットーン」という製品が登場しており、以降も進化を遂げています。また、自動で擬音を流す機能や、乾電池式の小型携帯用モデルが開発されるなど、多様なニーズに応える形で商品化されています。近年では、スマートフォンアプリとしても利用できるものが登場し、利便性がさらに向上しています。

このように、トイレ用擬音装置は個人のプライバシーを守るだけでなく、経済的・環境的負担の軽減にも寄与する、現代社会において欠かせないアイテムとなっています。

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