トゥインクル (橋)

概要

「トゥインクル」は、伊勢湾岸自動車道の一部として、三重県桑名市内を流れる木曽三川（木曽川、長良川、揖斐川）を渡る二つの巨大な橋、湾岸木曽川橋と湾岸揖斐川橋に付けられた親しみやすい愛称です。

この二つの橋は、名古屋方面の弥富木曽岬インターチェンジと湾岸長島インターチェンジ間、そして湾岸長島インターチェンジと湾岸桑名インターチェンジ間に位置しており、伊勢湾岸自動車道を代表する長大橋として、愛知県と三重県の県境近くに架かっています。特に、河口に近いこの地点では長良川が揖斐川に合流しているため、事実上、湾岸木曽川橋と湾岸揖斐川橋の二連橋として機能しています。その先進的な技術と美しい姿は高く評価され、2001年度には土木学会田中賞の作品部門を受賞しています。

技術的特徴

トゥインクルを構成する湾岸木曽川橋と湾岸揖斐川橋は、いくつかの重要な技術的特徴を備えています。

まず第一に、プレストレストコンクリート（PC）と鋼を組み合わせた複合構造である点です。これは、コンクリートの剛性の高さと鋼の軽量性を活かし、構造上の最適な性能を経済的に実現するための手法です。橋脚付近には高い剛性が求められるPC桁を、そして中央部の長い支間には軽量な鋼箱桁を配置することで、それぞれの素材の利点を最大限に引き出しています。

第二に、採用されている構造形式がエクストラドーズド橋であることです。この形式は、橋脚部に設けられた低い主塔から斜めに張られたケーブル（斜材）で主桁を支える構造で、外見は斜張橋に似ていますが、主桁の剛性が高く、橋全体の挙動としては桁橋に近い特性を持ちます。エクストラドーズド橋の特徴として、主塔の高さが比較的低いこと、そして斜材ケーブルの角度が水平に近いことが挙げられます。ケーブルの角度が小さいことで、車両の通行などによって生じる斜材の張力変動が小さくなり、ケーブルの疲労に対して有利になります。これにより、斜材の張力制限値を緩和することが可能となり、少ないケーブル本数で経済的に構造を成立させることができます。

そして特筆すべきは、トゥインクルが世界初のPC・鋼複合エクストラドーズド橋であるという点です。これは、前述のPCと鋼を組み合わせた複合構造と、エクストラドーズド橋形式を大規模な橋梁で組み合わせるという、当時として極めて革新的な試みでした。270メートルを超える長い最大支間を、この新しい複合エクストラドーズド形式によって効率的かつ経済的に実現したことは、その後の橋梁技術に大きな影響を与えました。

第三の特徴は、大規模なプレキャストセグメントを用いた施工技術です。これは、橋梁建設を早期かつ経済的に行うために不可欠な要素でした。

施工

トゥインクルは、幅員約33メートル、二つの橋を合わせた全長が約2,500メートルに及ぶ巨大構造物です。これを効率的に建設するため、特にコンクリート桁部には大規模プレキャストセグメント工法が採用されました。

この工法では、橋が架設される現場とは別の場所に製作ヤード（工場）を設け、そこでコンクリート桁を長さ5メートル程度のブロック（プレキャストセグメント）として事前に製造します。製造されたセグメントは、その後架設地点へと輸送され、現地で組み立てられます。製作ヤードを別途設けることで、天候や現場の状況に左右されずに桁の製作を進めることができ、大幅な工期短縮が可能となります。

トゥインクルの場合、製作ヤードは四日市市の霞ヶ浦埠頭に設置され、製造された巨大なプレキャストセグメントは、台船に乗せられて海上輸送されました。公道を輸送する場合のような重量制限がないため、最大440トンにもなる大型の部材を用いることができ、セグメントの総数を減らすことで、さらに工程の短縮と経済性の向上を図っています。

一方、鋼桁部は、鋼桁製作メーカーの工場で製造された後、こちらも海上輸送され、架設済みのコンクリート桁部から一括して吊り上げる一括架設工法が採用されました。これにより、1箇所あたり最大100メートルに及ぶ鋼桁部が迅速に設置されました。

諸元

種別: PC・鋼複合道路橋
形式: 5径間連続エクストラドーズド橋 (湾岸木曽川橋), 6径間連続エクストラドーズド橋 (湾岸揖斐川橋)
完成: 2001年（平成13年）
供用開始: 2002年（平成14年）3月24日
橋長: 湾岸木曽川橋 1,145 m, 湾岸揖斐川橋 1,397 m
最大支間: 湾岸木曽川橋 275 m, 湾岸揖斐川橋 271.5 m
架設工法:
コンクリート桁部: プレキャストセグメントによる片持ち架設工法
鋼桁部: 一括吊り上げ架設工法
照明デザイン: 石井幹子氏（ケーブルを白、主塔を緑（揖斐川橋は青）に日没後3時間30分ライトアップ）

トゥインクルは、その先進的な構造技術と施工技術によって、現代の長大橋建設における一つの重要な指標を示す橋梁として位置づけられています。

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