トゥグルク・ティムール

トゥグルク・ティムール：東西チャガタイ unified のハン

トゥグルク・ティムール（生年不詳 - 1363年）は、14世紀にモグーリスタン・ハン国（東チャガタイ・ハン国）のハンとして活躍した人物です。彼は東西に分裂していたチャガタイ・ハン国を一時的に再統一したことで知られています。

生涯

トゥグルク・ティムールは、チャガタイ・ハン国12代目のハンであるドゥアの子、エミル・ホージャの落胤とされています。天山山脈を拠点とするモグーリスタンの有力氏族ドゥグラト部のブラジによってハンに擁立されました。

当時のマー・ワラー・アンナフル地方を支配する西チャガタイ・ハン国は、1359年に有力者アブドゥッラーフが暗殺されて以降、各地の部族長が割拠する分裂状態にありました。1360年、トゥグルク・ティムールはタシケントより西チャガタイ・ハン国の支配する西トルキスタンへ軍を派遣し、バルラス部の指導者ハージーやスルドゥス部の指導者バヤンといった有力なエミールたちを打ち破りました。ハージーの甥であるティムールも降伏した貴族の一人であり、トゥグルク・ティムールはティムールにキシュ（現在のシャフリサブス）を領地として与えました。

しかし、モグーリスタン軍が帰還すると、ハージーが反旗を翻します。1361年3月から4月にかけて、トゥグルク・ティムールは自ら西トルキスタンに進攻し、アム川を越えてヒンドゥークシュに至り、スルドゥス部のバヤンやヤサウリー部のヒズルといった敵対者を捕らえ処刑しました。西トルキスタンのエミールたちはトゥグルク・ティムールに降伏し、ハージー暗殺後にバルラス部の指導者となったティムールも彼の主権を認めました。1362年、トゥグルク・ティムールは子のイリヤース・ホージャを西トルキスタンの統治者に任命してモグーリスタンに帰国し、東西チャガタイ・ハン国は一時的に再統一されることとなりました。

しかし、イリヤース・ホージャの補佐役に任じられたティムールや、アブドゥッラーフの甥フサインらモグーリスタンの支配を拒むアミールたちは、トゥグルク・ティムールに対して反乱を起こしました。1362年、モグーリスタン軍はティムールを撃破するものの、勢力を盛り返したティムールによって1363年に西トルキスタンはトゥグルク・ティムールの支配を離れ、同年、彼自身も没しました。彼の遺体はアルマリクに葬られ、彼を祀った霊廟が霍城県（コルガス市）に現存しています。

イスラームへの改宗

トゥグルク・ティムールは、東チャガタイ・ハン国のハンとして初めてイスラームに改宗した人物です。伝承によると、スーフィーのジャマール・アル＝ディーンと即位後にイスラームに改宗することを約束し、即位後には約束通りジャマール・アル＝ディーンの子であるアルシャド・アル＝ディーンの導きによって改宗し、配下のモンゴル人にも改宗を勧めました。アルシャド・アル＝ディーンが奇跡を示したことで、モンゴル人は畏敬の念を抱き、トゥグルク・ティムールと共に160,000人のモンゴル人も改宗したと伝えられています。

しかし、トゥグルク・ティムールの改宗後も、モグーリスタンがすぐにイスラム国家化したわけではありませんでした。東トルキスタンの仏教徒社会に急激な変化は起こらず、仏教寺院は免税特権を与えられていました。宮廷内も西チャガタイ・ハン国ほどトルコ化は進んでおらず、モンゴル語が公用語の地位を保っていました。

まとめ

トゥグルク・ティムールは、分裂したチャガタイ・ハン国を一時的に統一し、イスラム教を導入した重要な人物です。彼の治世は、その後のティムール帝国の成立や中央アジアの歴史に大きな影響を与えました。

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