シャフリサブス

シャフリサブス：ティムールの故郷、歴史と文化が息づく古都

シャフリサブス（Shahrisabz/Шаҳрисабз）は、ウズベキスタンのカシュカダリヤ州に位置する人口約53,000人の都市です。サマルカンドの南約80kmに位置し、標高約622mの場所にあります。かつては中央アジアの主要都市として栄え、特に14世紀にトルキスタンを席巻したティムールが生まれた地として知られています。街の名前はペルシア語で「緑の町」を意味し、その名の通りオアシス都市として緑豊かな景観を誇ります。

古代からの歴史

シャフリサブスの歴史は古く、元々は「心休まる場所」を意味するケシュ（Kesh）という名前で知られていました。古代のシャフリサブスは、中央アジア最古の都市の一つであり、アレクサンドロス大王によるアケメネス朝滅亡の舞台ともなりました。アレクサンドロス大王はこの地に滞在し、妻ロクサネを娶ったと伝えられています。

ケシュはソグディアナの都市として知られ、中国の史料にも「史国」として登場します。玄奘三蔵の『大唐西域記』には「羯霜那国」として記述されています。イスラム化が進んだ9世紀、10世紀には、サマルカンドやブハラの発展に伴い衰退していきましたが、14世紀にはティムール朝の時代に再び歴史の表舞台に登場します。

ティムール朝時代の繁栄

ティムールは1336年にシャフリサブス近郊で生まれました。1379年にホラズムの学者や職人を移住させ、1381年にはヘラートの住民と城門を移築し、シャフリサブスを文化都市として発展させました。「学問と道徳のドーム」の称号が与えられ、アク・サライ宮殿の建設をはじめ、マドラサ、僧院、宿泊所、貯水槽などが建設されました。ティムールは故郷であるシャフリサブスを愛し、ここに自らの墓を建設しようと計画しましたが、最終的にサマルカンドを首都に定めました。

シャイバーニー朝による破壊と復興

16世紀には、ブハラ・ハン国（シャイバーニー朝）の指導者アブドゥッラー2世によってシャフリサブスの大部分が破壊されました。伝説によると、アブドゥッラーはシャフリサブス攻略の際に愛馬が死んだことに怒り、街を破壊したとされています。しかし、その後、自らの破壊行為を悔いたと言われています。17世紀末には、統治権がケネゲス部に移り、ブハラ・ハン国成立後も自治権を巡り争いました。1870年にはロシア帝国に併合されました。

ソビエト連邦崩壊後、ウズベキスタン共和国が独立すると、ティムール再評価の動きが進み、シャフリサブスはティムールの故郷として観光都市化が進められています。

産業と文化

シャフリサブスでは、ワイン、繭、陶製品などが多く生産されています。また、刺繍工場も置かれています。この街は、歴史的建造物と伝統工芸が共存する場所です。

ユネスコ世界遺産

シャフリサブスは、ティムール朝時代の建築物が残る地区が、2000年にユネスコの世界遺産に登録されました。特に重要な建築物として以下が挙げられます。

アクサライ宮殿：ティムールの夏の王宮であり、「白い宮殿」とも呼ばれます。1380年に建設が始まり、1405年に完成しました。かつては高さ50mの塔がそびえ立ち、屋上にはプールがありました。現在では、塔は崩れて38mになっていますが、青と金色のタイルやレンガが美しいモザイク状の壁面を飾っています。宮殿には「もしも、汝我が権力に挑むならば、この建物を見よ」という文字が刻まれています。

ドルッテイロヴァット（瞑想の家）の建築群：ティムールの孫ウルグ・ベクによって統合された建築物群です。

金曜モスク：1435年にウルグ・ベクが父シャー・ルフを偲んで建設したモスクです。「コク・グンバッズ・モスク（青色のドームを持つモスク）」の名前で知られています。

グンヴァズイ・サイダーン廟：1437年から1438年の間にウルグ・ベクが一族の墓所として建立しました。内部にあるコクダッシュ（青い石）という墓石には、病気を治す効力があると信じられています。

シャムスッディーン・クラール廟：1374年にティムールが父タラガイと、師事したスーフィーの聖者シャムスッディーン・クラールのために建てた墓所です。

権力の霊廟（ジャハーンギール廟）：1392年に建立され、ティムールが最も寵愛した王子ジャハーンギールが眠ります。隣接するモスクは、8世紀にイラクから来たイマームのハザーリーの墓とされています。

ティムールの墓：ハザーリーの傍らに地下室へ続く壕が発見されましたが、ティムールはサマルカンドに埋葬されているため、この墓室には2体の特定できない遺体が埋葬されています。

また、中世の浴場や1[[8世紀]]のバザールの跡も発見されています。

世界遺産の登録基準

シャフリサブスの世界遺産登録は、以下の基準に基づいて行われました。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
* (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること。

危機遺産

2016年、シャフリサブスは観光方面での過度の開発が問題視され、危機にさらされている世界遺産（危機遺産）リストに登録されました。歴史的遺産を守るための対策が求められています。

シャフリサブスは、ティムール朝の栄華を今に伝える貴重な都市です。歴史と文化、そして美しい建築物があふれるこの街を訪れ、その魅力を体験してみてはいかがでしょうか。

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