トゥスクルム

トゥスクルム：古代ローマの都市、中世の伯爵家、そして現代の遺跡

トゥスクルムは、イタリアのローマ近郊、現在のフラスカーティ付近に位置する都市でした。アルバン丘陵のトゥスコロの丘にその遺跡が残っています。古代ローマ時代には、キケロの著作『トゥスクルム荘対談集』の舞台となり、中世にはトゥスクルム伯家が教皇庁を牛耳るなど、歴史の重要な局面に登場します。

古代のトゥスクルム

鉄器時代初期、ラテン人の居住地としてトゥスクルムは誕生しました。ラティウム地方の都市国家の一つとして発展し、伝説によればテレゴノスによって創建されたとも、アルバ・ロンガの植民市であったとも伝えられています。

紀元前496年、トゥスクルムはラティウム同盟の一翼を担い、共和政ローマとの間でレギルス湖畔の戦いを繰り広げました。その後、ローマとの関係は友好的なものとなり、紀元前381年にはラティウムの都市としては初めてローマ市民権を獲得し、ローマの支配下にある自治都市（ムニキピウム）となりました。以降、トゥスクルムはローマに忠誠を尽くし、アエクイ人やウォルスキ人との戦いに参加しました。

気候と景観に恵まれたトゥスクルムは、ローマの富裕層にとって魅力的な避暑地となり、ルクルス、マエケナス、ティベリウスといった人々が別荘（ウィラ）を構えました。特にキケロのトゥスクルム荘は、『トゥスクルム荘対談集』をはじめとする哲学著作の執筆地として知られ、アテナイのアカデメイアやリュケイオンを模した空間が設けられていました。弁論家クラッススのトゥスクルム荘は、キケロの『弁論家について』の舞台となりました。また、小プリニウスのトゥスクルム荘は、トスカーナ荘などとともに庭園史において重要な位置を占めています。

トゥスクルムは、大カトーをはじめ、マミリウス氏族、フルウィウス氏族、フォンテイウス氏族、ユウェンティウス氏族、ポルキウス氏族など、多くの著名な人物を輩出しました。

中世のトゥスクルム

10世紀から12世紀にかけて、トゥスクルム伯家がこの地を支配しました。同家の女性マロツィアがローマ教皇の愛妾となると、教皇庁は同家の傀儡と化し、いわゆる「ポルノクラシー」と呼ばれる時代を迎えました。しかし、1191年、トゥスクルムはローマとの戦いに敗れ、破壊されました。

近現代のトゥスクルム

現在、トゥスクルムでは市壁や劇場、別荘などの遺跡が発掘されています。これらの遺跡は、かつてこの地に存在した都市の繁栄を物語っています。

関連項目

* トゥスコラーナ街道

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