トゥルグト・オザル

トゥルグト・オザル

トゥルグト・オザル（トルコ語: Halil Turgut Özal、1927年10月13日 – 1993年4月17日）は、トルコの名高い政治家であり、首相及び大統領としての役職を歴任しました。彼は1980年の軍事クーデター後に祖国党を立ち上げ、首相に就任。約10年間にわたる長期の政権を確立し、経済政策の面ではトルコの経済の自由化を推進しました。さらに、政教分離の原則を緩和し、イスラームの復興にも影響を与えるような任務を果たしました。

生い立ちと教育

オザルは1927年に東アナトリアのマラティアで生まれました。1950年にイスタンブール工科大学の電気工学科を卒業後、国家水利庁や電力調査庁で勤務し、1961年には兵役を終え、国家計画庁にてキャリアを重ねていきました。1966年には国家計画庁長官に就任し、テクノクラートとしての地位を確立。その後、民間企業に転職しました。1979年、保守的な公正党の政権下では事実上、トルコの経済運営を任されました。

首相就任と政権の確立

1980年の軍事クーデターにより、全政党が活動を禁止された時期にオザルは新たにビュレント・ウルス政権の経済担当副首相に抜擢されました。1983年には、クーデター前に存在していた主要政党から支持を集め、祖国党を結成。1983年の総選挙では見事に勝利し、首相に選出されました。1987年には再選を果たし、支持基盤を強固にしました。

経済政策

オザル政権下では、経済の自由化が進められました。公共部門の民営化、貿易赤字の縮小、外資誘致など多岐にわたる経済政策が施行され、トルコのGDPは成長に転じました。しかし、この成長は大財閥によって恩恵を受ける一方で、インフレの進行や貧富の格差を拡大させる要因にもなりました。

外交政策

オザルは1987年にヨーロッパ共同体への加盟申請を行い、湾岸戦争ではアメリカとの協力を強化しました。また、ソビエト連邦の崩壊に伴う新興独立諸国との関係を積極的に築き、1985年にはイランとパキスタンとの間で経済協力機構を結成しました。

政軍関係

オザルは軍政下で経済閣僚を経験し、軍との良好な関係を維持しながら政治介入を巧妙に回避しました。1987年にはネジプ・トルムタイを参謀総長に任命し、文民主導による政軍関係の構築に成功しました。

イスラーム政策

オザル政権下では「トルコ・イスラーム総合論」が普及しました。これにより、トルコのアイデンティティとしてイスラームと民族主義の融合が位置付けられ、学校教育に宗教文化の科目が追加されるなど、世俗主義が影響を受けました。

逝去とその後

トゥルグト・オザルは1993年4月17日に心臓発作により在任中に亡くなりました。後任にはスュレイマン・デミレルが選ばれました。オザルの死因については、長年にわたり毒殺説がささやかれていましたが、2012年の解剖により実際に毒物が検出され、その説が正しかったことが明らかになりました。

参考

松谷浩尚 『オザル』 岩波書店
新井政美 『トルコ近現代史』 みすず書房
* 澤江史子 『現代トルコの民主政治とイスラーム』 ナカニシヤ出版

オザルの生涯は、トルコの現代史における重要な一ページであり、その影響は今もなお、多くの人々に記憶されています。

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