トゥルチャ

トゥルチャ：歴史と文化の交差する都市

ルーマニア東部に位置するトゥルチャは、長い歴史と豊かな文化を誇る都市です。古くはアエギッススとして知られ、紀元前には既にシケリアのディオドロスの文書にその名が記されています。詩人オウィディウスも自著『エクス・ポント』の中で、この地を「ダキア人の創建者カルピウス・アエギッススにちなむ町」として言及しています。

紀元前15年から12年にかけてのローマ帝国との戦いの後、トゥルチャはローマの支配下に入りました。ローマ人は都市を再建し、独自の技術と建築的視点を取り入れ、都市計画を一新しました。現在でも、ローマ時代の市壁の遺跡や防御塔が、その痕跡を物語っています。これらの遺物はトゥルチャ考古学博物館に収蔵され、当時の生活を垣間見ることができます。アエギッススは要塞都市として、10世紀頃まで文書に記録されています。

ローマ支配の後、トゥルチャは東ローマ帝国、ブルガリア帝国の支配を受けました。10世紀から13世紀にかけてはジェノヴァ共和国の支配下に入り、その後はドブルジャのブルガリア貴族ドブロティツァ、ワラキア公ミルチャ1世が支配しました。

1416年、オスマン帝国がトゥルチャを征服し、460年もの長きにわたる支配が始まりました。1878年のベルリン会議において、ドブルジャ地方とともにルーマニアに併合されるまで、オスマン帝国の支配が続きました。1848年頃には小さな造船所を持つ都市でしたが、1860年には都市特権を授かり、トゥルチャ県の県都へと発展していきました。

2002年の統計によると、トゥルチャの人口は約9万1875人。その92.3％をルーマニア人が占めています。その他、3.4％のリポヴァン人、1.4％のトルコ人が暮らしています。リポヴァン人は、中世にロシア正教会の改革を拒否し、ロシアを追われた人々です。かつてこの地にはブルガリア人も多く住んでいましたが、1941年のクラヨーヴァ条約締結により南ドブルジャがブルガリアに返還されたことを受け、北ドブルジャを離れていきました。

トゥルチャは、多様な民族が共存する国際色豊かな都市です。歴史的な建造物や考古学的な発見は、この地の豊かな過去を物語り、多くの観光客を魅了しています。現在も、歴史と文化の交差する地として、トゥルチャは発展を続けています。姉妹都市には、ブルガリアのシュメン、デンマークのオールボー、イタリアのロヴィーゴなどがあります。これらの都市との交流を通じて、トゥルチャは国際的なネットワークを築き、更なる発展を目指しています。

トゥルチャの歴史は、ローマ帝国、ブルガリア帝国、オスマン帝国といった、様々な勢力の支配下に置かれた複雑な過程を示しています。それぞれの勢力の影響は、トゥルチャの文化や都市構造に刻まれ、独特の都市景観を形成しました。多様な民族が共存するトゥルチャは、その歴史と文化を未来へと継承していくでしょう。

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