トゥルム遺跡

トゥルム遺跡

トゥルム遺跡は、メキシコのユカタン半島東海岸、特にカリブ海が広がる崖の上に位置する、保存状態の良いマヤ文明の遺跡です。マヤ文明末期に栄えたこの城壁都市は、内陸にあるコバー遺跡への主要な港として機能しており、その美しい景観は観光地としても非常に人気があります。

歴史とその重要性

トゥルムは、元々「夜明けの街」を意味するZamaという名前で知られていました。名前の通り、この場所は日出とともに活気づく重要な地点でした。ユカテコ語の「トゥルム」は「壁」や「フェンス」を意味し、都市を囲む堅固な防壁は侵入者からの防衛を担っていました。また、黒曜石の重要な交易拠点として栄え、文化的な礼拝の場でもあったようです。トゥルムの人口はおおよそ1000から1600人と推測されています。

1518年、スペイン探検家フアン・デ・グリハルバの記録が遺跡への最初の文献として残りました。1843年には、ジョン・ロイド・スティーブンスとフレデリック・キャザウッドが遺跡を詳細に記録したことで、世界的にその重要性が認識されるようになりました。以降、多くの研究者による調査が行われ、トゥルムが後古典期から繁栄していたことが明らかにされました。

建築様式

トゥルムの建築様式は、ユカタン半島特有であり、基礎が地面よりも高く設計されています。戸口は狭く、支持柱によって内部が区分けされており、壁は上に行くほど広がるフレア形状となっています。部屋の奥には小窓があり、屋根は梁と割石による構造で支えられています。このような建築デザインは、トゥルムに留まらず、近隣のチチェン・イッツァ遺跡でも見受けられます。

防壁は南北に400メートル、東西に比べやや短く建設され、厚さ約8メートルの堅牢さを持ちます。見張り台が設けられた小型建物もあり、城壁内にはもともと自然の井戸が存在し、飲み水の供給源となっていました。

重要な建物としては「中央神殿」「フレスコ画の宮殿」「降臨する神の神殿」があり、中でもフレスコ画の宮殿は特に珍しい装飾が施されています。観測所として使用されていたこの宮殿には、太陽の動きを追う機能があったと考えられています。

貿易の中心地

トゥルムは、メキシコ中部や中央アメリカと繋がる重要な貿易地点でもあり、多くの遺物が発見されています。銅製品や陶器、香炉など、貿易品は海を経て内陸に運ばれていました。トゥルムから700キロ以上離れた場所の高品質なヒスイや黒曜石が遺跡内で発見されたことは、ここが主要な交易の集約地点であったことを示しています。

観光の魅力

トゥルム遺跡は、周辺の他のマヤ遺跡に比べてサイズがコンパクトでありながら、保存状態が非常に良いことから多くの観光客を引き寄せています。カンクンなどのリゾート地からもアクセスが良く、毎日多くのツアーバスが運行されています。美しいカリブ海に面するロケーションは、訪れる人々にとって魅力的です。

近くには多数のセノーテ（天然井戸）もあり、カリブ海のビーチと並ぶ人気の観光スポットとなっています。観光客は遺跡、周辺の市街地、ホテルゾーン、シアン・カアン生物圏保護区などを訪れ、マヤ文明に触れることができる貴重な体験を楽しむことができます。


トゥルムは、その歴史的および文化的な意義を持った遺跡として、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。

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