トウサワトラノオ

トウサワトラノオについて

トウサワトラノオ（唐沢虎の尾、学名：Lysimachia candida）は、サクラソウ科オカトラノオ属に属する多年草です。この植物は、特定の環境条件下で旺盛に成長し、大群生を形成することがある一方で、地下茎の発達が乏しいため、越年草と考えられています。特に人為的な攪乱があった場合には、その生息地で目撃されることがあり、非常に興味深い植物です。

特徴

トウサワトラノオの茎は無毛であり、赤みを帯びた円柱形をしていて、しばしば束生します。直立して成長し、高さは20から40センチメートルになります。特に栄養状態が良好な場合、茎の上部で2-3本に分枝することもあります。葉は互生で、葉身は倒披針形またはへら形をしており、長さは2-4センチメートル、幅は5-8ミリメートルです。葉の先端は鈍く、基部は狭まり、短い葉柄に接続しています。葉の縁は全縁で、整った形状をしています。

花期は主に4月下旬から5月にかけてで、枝先に総状花序が出現し、白い花が密集して咲きます。これらの花は下側から開花し、花序軸に付随して長さ12-18ミリメートルの花柄を持っています。花冠の直径は約10ミリメートルで、5つの裂片に分かれ、倒披針形で先端は尖っています。萼は深く5裂し、細くて鋭い裂片を持ち、長さは4-6ミリメートルです。雄蕊は5つあり、黄色の葯があり、花粉も同供する黄色です。花柱は1本で、長さは約6ミリメートルです。秋になると、葉は赤く紅葉し、茎が倒れることで基部から根を生じ、新たな苗が育ちます。

分布と生育環境

この植物は主に日本の本州、特に栃木県と愛知県に分布していますが、生息地は非常に限られています。一部休耕田や湿地のような水分が豊富な環境にごく稀に見られます。栃木県では一時期絶滅したと考えられていましたが、2006年に生態系調査で再度発見され、その後保全のための取り組みが始まりました。愛知県でも、1999年に絶滅した後、2002年に再発見され、現在も保護されています。加えて、台湾では1898年に発見された後、長い間姿を消していましたが、2020年に再発見されました。

名前の由来

和名の「トウサワトラノオ」は、中国語での「唐」や湿地を指す「サワ」、花の形状を示す「トラノオ」に由来しています。また、種小名の「candida」は「純白の」という意味があります。

保全状況

この植物は環境省レッドリストにおいて絶滅危惧IB類（EN）に分類され続けています。栃木県では絶滅危惧II類に指定され、愛知県でも同様の懸念が持たれています。これにより、関係者による継続的な保全や管理が求められています。

類似種

トウサワトラノオに似た植物として、サワトラノオ（Lysimachia leucantha）が挙げられます。こちらは通常高さが40-80センチメートルになり、花のサイズや形状が異なるため、比較が容易です。日本国内では本州や九州に分布しています。

このようにトウサワトラノオは、限られた生息環境に依存している珍しい植物であり、その特性や保全の重要性が広く認知されていくことが期待されています。

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