トッカータ (シューマン)

ロベルト・シューマン「トッカータ ハ長調 作品7」について

ロベルト・シューマンが1833年に作曲した「トッカータ ハ長調 作品7」は、ピアノ独奏のための作品です。当時、ピアニストとしての腕を磨いていたシューマンは、演奏技術の向上を追求していました。その過程で、パガニーニの奇想曲をピアノ用に編曲した『パガニーニの奇想曲による練習曲』など、高度な技巧を要する作品を多く生み出しました。この「トッカータ」もその一つであり、華やかな外面的効果と、演奏技術の高さを要求する作品として、現在でも人気が高く、演奏会でしばしば取り上げられています。

作曲の経緯

現行の稿は1833年後半に完成しました。それ以前の1829年から1830年にかけて初稿が書かれており、この自筆譜は『練習曲』（"Exercice"）と題されていました。その後、『幻想的練習曲』("Exercice fantastique") や『二重音による幻想的練習曲』("Etude fantastique en double-sons")といった題名でも呼ばれることがありました。2009年には、最終稿と合わせてヘンレ社から出版され、2011年には初録音がリリースされました。

最終稿は1834年春に出版され、シューマンの親友であるピアニスト・作曲家のルートヴィヒ・シュンケに献呈されました。シュンケからは返礼として『大ソナタ ト短調』作品3が献呈されましたが、シュンケは同年に肺結核で23歳という若さで亡くなりました。シューマンは、優れたピアニストであったシュンケが、頭の中で練習するだけでこの曲を弾きこなしたと記しています。

1834年9月9日には、クララ・ヴィークがライプツィヒでこの曲を演奏しました。当時、この「トッカータ」は非常に難易度が高く、「この地で弾きこなせるのはシュンケとクララ・ヴィークくらいだろう」と評されました。

楽曲の特徴

この曲は、シューマンにとって初めてとなる完全なソナタ形式で構成されています。曲は、跳躍する2小節の序奏で始まり、終始、重音で軽やかに鍵盤上を駆け巡ります。半音階的な第一主題と、内声にレガートな旋律が歌われる第二主題から構成されており、展開部にも新しい旋律が登場するなど、聴衆を飽きさせない工夫が凝らされています。演奏効果も非常に高く、聴きごたえのある作品となっています。

初版譜にはシューマン自身が「演奏者にありうべき最大限の自由を与えるため」と記しており、演奏指示はほとんど書き込まれていません。これにより、演奏者の解釈や表現力がより重要になります。

参考資料

[トッカータ]]の楽譜 - [国際楽譜ライブラリープロジェクト)
[トッカータ]] - [ピティナ・ピアノ曲事典
演奏の動画（シモン・バレル） - YouTube
演奏の動画（ジョルジュ・シフラ） - YouTube

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