トニー・ウィーラー

ロンリープラネットの創設者、トニー・ウィーラーの冒険の人生

トニー・ウィーラーは、世界的に有名な旅行ガイドブック出版社、ロンリープラネットの創業者として知られています。1946年生まれの彼は、国際色豊かな幼少期を過ごしました。イギリス海外航空協会に勤務する父親の仕事の関係で、パキスタン、バハマ諸島、そしてアメリカと、幼少期から世界各地を転々とします。その後、イギリスに戻りウォーリック大学に進学。

彼の転機は、1970年にロンドンの公園で出会った妻、モーリーンとの出会いでした。旅行好きという共通の趣味を持つ2人はすぐに意気投合し、翌年には結婚。そして、1972年、新婚旅行として、ロンドンからヨーロッパ、中東、アジアを経てオーストラリアへと向かう壮大な旅に出ます。この旅は、単なる新婚旅行ではありませんでした。オーストラリアでしばらく働き、帰国資金を稼ぐという、計画性と冒険心が入り混じった旅でした。

この旅の行程は、実にユニークです。ミニバスでアフガニスタンまで行き、車を売却。その後はバスや鉄道、さらにはヨットに便乗するなど、ありとあらゆる交通手段を駆使して東南アジアを縦断します。オーストラリアに到着したときには、所持金はわずか27セントとカメラだけだったといいます。しかし、彼らにとってこの旅は、単なる移動手段の問題ではありませんでした。それは、世界を肌で感じ、人々と出会い、文化に触れる、かけがえのない経験の連続でした。

オーストラリアのシドニーで、彼らの旅の体験談は大きな注目を集めます。そこで、新婚旅行中に書き留めていた日記をもとに、1973年、初の旅行ガイドブック『Across Asia on the Cheap』を自費出版します。94ページ、1500部という小さな冊子は、自分たちの手で印刷し、ホチキスで留めただけのシンプルなものでした。しかし、このガイドブックは発売後わずか1週間で完売。その内容は、若者たちがバックパックひとつで旅をするための、実践的な情報と知恵に満ち溢れていました。

この成功をきっかけに、ウィーラー夫妻は本格的に旅行ガイドブックの出版に力を注ぎます。18ヶ月間の東南アジア旅行を経て、1975年には『South-East Asia on a Shoestring』を出版。これも大ヒットとなり、ロンリープラネットというブランドの確固たる地位を築き上げました。その後も、『ネパールとヒマラヤトレッキング』（1976年）、『オーストラリア』（1977年）、『アフリカ』（1977年）、『ヨーロッパ』（1977年）、『ニュージーランド』（1977年）など、次々とガイドブックを出版し、世界中の旅行者を魅了していきます。

ロンリープラネットは、単なる旅行ガイドブックではありませんでした。それは、冒険心と知的好奇心旺盛な人々にとってのバイブルであり、世界を知るための羅針盤でした。ウィーラー夫妻が独自に積み重ねてきた経験、そして彼らが各地で出会った人々との触れ合い、そのすべてがガイドブックに息づいていました。その姿勢は、世界中の人々の共感を呼び、ロンリープラネットを旅行業界における確固たる存在へと成長させました。

2002年には、ニューヨーク・タイムズ紙より「旅行業界で最も影響力のある人物」に選出されるなど、その功績は広く認められています。貧乏旅行から始まった冒険は、世界中の人々の旅を豊かにする、大きな事業へと発展したのです。トニー・ウィーラーの人生は、まさに冒険と挑戦の人生であり、世界を旅するすべての人々にとってのインスピレーションの源となっています。

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