トビカズラ属

トビカズラ属（Mucuna）

トビカズラ属は、マメ科に属する植物の一群で、その多くはつる性の性質を持ちます。熱帯から亜熱帯地域にかけて広く分布しており、約100種が確認されています。日本では、ワニグチモダマ、ウジルカンダ、カショウクズマメ、トビカズラの4種が自生しています。

特徴

トビカズラ属の植物は、つる性のものが主体ですが、一部には直立性の常緑樹や草本も見られます。葉は羽状複葉で、通常3枚の小葉から構成されています。葉には腺点がなく、托葉と小托葉を備えているのが特徴です。

花序は葉の付け根から発生し、円錐状、総状、偽総状、または散形花序を形成します。花序の節はこぶ状になっており、これは円錐花序の側枝が退化した痕跡と考えられています。この節には苞が付きます。

花は蝶形花（いわゆる豆の花の形）で、大きく、暗紫色など鮮やかな色合いを持つものが多いですが、黄緑色の花を咲かせる種も存在します。萼は椀型で、先端が4つに裂けており、花軸側の裂片は丸みを帯びているか、小さく2つに裂けています。反対側の裂片は他のものよりも長くなっています。

旗弁（上側の花弁）は丸みを帯びており、竜骨弁よりも短いのが特徴です。雄しべは10本あり、旗弁側の1本は独立しており、残りの9本は互いに合着しています。雄しべには長短2つのタイプがあり、それらが交互に並んでいます。短い雄しべの葯は細長い楕円形で、先端または中央付近で細い花糸に繋がっています。長い雄しべの葯はほぼ円形で、中央付近で花糸に繋がっています。

雌しべは1個で、基部には花盤があります。柄はなく、花柱は非常に細長いものが多く、先端には小さな頭状の柱頭があります。

豆果は大型になるものが多く、卵形、楕円形、または細長い線形をしています。表面には刺毛があり、縫合線や側面に翼が出ることが多いです。

学名の属名「Mucuna」は、ブラジルでの呼称に由来します。

分類

トビカズラ属は、デイゴ属やホドイモ属と近縁であると考えられています。

種と分布

世界の熱帯・亜熱帯地域に約100種が分布しています。日本には、以下の4種が自生しています。

M. gigantea：ワニグチモダマ
M. macrocarpa：ウジルカンダ
M. membranacea：カショウクズマメ
M. sempervirens：トビカズラ

海外から導入された種としては、ムクナ・ベネッティ（M. bennettii）があります。

利用

実用的に重要な種は、ハッショウマメ（M. pruriens var. utilis）で、その豆は食用とされます。日本でも第二次世界大戦後に食糧増産のために導入されましたが、現在では九州以東で見かけることはほとんどありません。

観賞用としては、真っ赤な大きな花を咲かせるムクナ・ベネッティや、M. nova-guineensisなどがハワイやシンガポールで栽培されています。ただし、温室栽培が必要であり、大きくなるため、日本ではあまり普及していません。

参考資料

大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科～イラクサ科』,(2016)、平凡社
相賀徹夫編著、『園芸植物大事典 5』、(1989)、小学館

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