トポゴン

トポゴン：航空測量用の先駆的広角レンズ

トポゴン（Topogon）は、1933年にロベルト・リヒテルによって開発された対称型の広角レンズで、特に航空測量カメラでの利用を目的としています。このレンズは前後が完全に対称となった構造であり、非常に独特な光学設計を持っています。

構造と光学性能

トポゴンは、ハイパーゴンレンズに基づいた設計で、深いメニスカス凸レンズが前後に配置され、その内側には凹レンズが向かい合わせになっています。最初はF6.3の明るさを持ち、画角は100度を誇ります。このように対称的なデザインは、レンズ全体の収差を均等にし、シャープな画質を提供します。トポゴンは、米国特許第2031792号を取得しており、特に航空測量に特化した用途において、その性能を最大限に引き出すことができました。

ボシュロム社では、このレンズを「メトロゴン（Metrogon）」の名前でライセンス生産し、同じく航空測量カメラに使用しました。メトロゴンは、トポゴンの基本設計をもとに、ボシュロム独自の改良を加えた製品です。これにより、前後の完全な対称性を崩した設計が施されているため、トポゴンの特許番号は刻印されていません。

光量調整と補正方法

トポゴンでは、コサイン4乗則により周辺の光量落ちが激しくなりがちです。これを補うために、航空測量用に外周から中心にかけて光量が徐々に暗くなるようなグラデーションフィルタが用意されています。従来のハイパーゴンでは、風車付きのフィルタを用いて露光し、再露光するという手法で補正を行っていますが、トポゴンはこのフィルタを使い、光の均一性を保つことが可能です。

他のレンズと共通する特性

トポゴンのレンズ設計は、ニコンのWニッコール2.5cmF4、キヤノンの25mmF3.5、マミヤプレス用のセコール65mmF6.3、さらにはKMZ製のオリオン15 28mmF6など、他のレンズにも影響を与えています。また、シュナイダー・クロイツナッハ製のクセノターの後群がトポゴンに似た特性を持っていることも知られています。

航空測量カメラへの適用

トポゴンは、特に航空測量カメラとの親和性が高く、以下のモデルで使用されています。

• - トポゴン10cmF6.3：18cm幅のロールフィルムを使用するスクエアフォーマットのカメラ「RMK10/18」
• - トポゴン20cmF6.3：30cm幅のロールフィルムを使用するスクエアフォーマットのカメラ「RMK20/30」

これらのカメラは戦前の日本にも輸入され、陸軍が撮影したフィルムが国土地理院に保存されています。これにより、現在でも地図や空中写真の閲覧サービスを通じて当時の航空写真を確認することが可能です。

関連項目

トポゴンは、多くの光学系に多大な影響を与えたレンズであり、カール・ツァイスのレンズ製品一覧やツァイス・イコン、コンタックスなど、著名な光学メーカーと関連しています。

参考文献

小林孝久著『カール・ツァイス創業・分断・統合の歴史』（朝日新聞社、ISBN 4-02-258480-7）からも、トポゴンの設計や背景について深く知ることができます。

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