トミー・ダグラス

トーマス・クレメント・“トミー”・ダグラスの生涯と業績

トーマス・クレメント・“トミー”・ダグラス（1904年10月20日 – 1986年2月24日）は、カナダの政治界で特に重要な役割を果たした人物であり、サスカチュワン州で初の社会主義者の州首相としてユニバーサルヘルスケアの導入を実現したことで知られています。彼は「カナダの医療の父」と称され、国民から幅広い尊敬を集める存在となりました。

初期の生涯

ダグラスはスコットランドのフォルカークで生まれましたが、家族と共に1910年にカナダに移住し、ウィニペグに定住しました。幼い頃に怪我をし、骨髄炎を患ったことで、外科医から特別な治療を受ける体験をします。この経験が、すべての人が平等に医療を受ける権利を持つべきだという信念の根底に影響を与えました。また、彼の青年時代には、ウィニペグでのゼネラル・ストライキを目撃し、不当な権力による弾圧を経験します。

教育と思想の変遷

1924年、ダグラスはブランドン大学に入学し、社会的福音運動の影響を受けました。1930年に卒業後、1933年にはマックマスター大学で社会学の修士号を取得します。しかし、彼の卒業論文は当時の優生学に基づいたものであり、問題に対して誤った見解を持っていました。ナチス・ドイツを訪れたことをきっかけに、その思想は大きく変わり、政治家としての道を歩むことになります。

政治家としてのキャリア

ダグラスはサスカチュワン州のウェイバーンで牧師として活動し、社会主義に傾倒していきました。1935年には下院議員に選出され、1944年にはサスカチュワン州の州首相に就任します。この時、協同連邦党は53議席中47議席を獲得し、北米初の社会民主主義政府が誕生しました。在任中、ダグラスは多くの革新的な政策を推進しました。

革新的な政策とユニバーサルヘルスケア

彼が最も重要視した政策は、公衆医療政策でした。1962年に導入された包括的医療制度は、当時の医師たちから強い反発を受けましたが、ダグラスは医療の平等を追求しました。彼の後継者も、彼の理念を引き継ぎ、医療保障の充実を図るための取り組みを続けました。これによりカナダ全体で公衆医療政策が進められるきっかけが作られました。

新民主党の設立

1961年、協同連邦党は労働者団体と合併し、新民主党を結成しました。ダグラスは初代党首に選出されますが、彼の選挙活動は波乱に満ちたものでした。それでも彼は政界で存在感を示し続け、1971年に党首を辞任するまで活躍しました。

遺産と評価

ダグラスは教育機関から名誉法学博士号を授与され、1981年にはカナダ勲章も受章しました。彼の功績は、現在のカナダの医療制度や社会的福祉に大きく影響を与えています。また、彼の家族も著名な存在であり、娘のシャーリー・ダグラスは俳優ドナルド・サザーランドと結婚し、彼らの子供であるキーファー・サザーランドはダグラスの孫にあたります。

トミー・ダグラスはカナダの医療制度を再構築し、社会的公正を推進した歴史的な人物であり、その業績は今も多くの人々に影響を与えています。

もう一度検索