トミー・モリソン

トミー・モリソン（Tommy Morrison、1969年1月2日 - 2013年9月1日）は、アメリカ合衆国出身の元プロボクサーであり、元WBO世界ヘビー級王者です。彼の人生は、リング上での成功と、リング外での数々の困難が入り混じった、波乱に満ちたものでした。

生い立ちとボクシングへの道

モリソンは、荒れた家庭環境で育ちました。父親からの虐待、両親の離婚、そして兄弟が強姦罪で有罪となるなど、困難な幼少期を過ごしました。学校を中退後、建設現場などで働き、13歳で身分証明書を偽造し、タフマンコンテストに出場。年齢も体格も上の大人たちと対戦し、50勝1敗という驚異的な戦績を収めました。その後、アマチュアボクシングに転向し、222勝20敗の成績を残しましたが、オリンピック国内予選決勝でレイ・マーサーに敗れ、プロへと転向します。

プロボクサーとしてのキャリア

1988年11月10日、プロデビュー戦を初回KO勝利で飾ると、その後28連勝（24KO）を記録し、一躍注目を集めました。1991年10月18日、アマチュア時代に敗北したレイ・マーサーとのWBOヘビー級王座決定戦に挑みましたが、5回TKO負けを喫しました。しかし、1993年6月7日にはジョージ・フォアマンを12回判定で破り、WBO世界ヘビー級タイトルを獲得。そのわずか数ヶ月後の10月29日、マイケル・ベントに初回TKO負けを喫し、王座から陥落しました。

1995年6月10日、ドノバン・ラドックに勝利しIBCヘビー級タイトルを獲得しますが、同年10月7日にはレノックス・ルイスに6回TKO負けを喫しました。

HIV感染と波乱の晩年

1996年2月、アーサー・ウェザーズとの試合直前の健康診断でHIV陽性反応が出たことで試合は中止となり、マイク・タイソン戦を含む3試合の契約もキャンセルされました。この結果、薬物依存に陥り、離婚も経験しました。1996年11月3日にはHIVに関する規定のなかった日本で試合を行い勝利しますが、2007年2月22日、10年ぶりにボクシングに復帰。その後、再びライセンスを剥奪され、引退します。晩年はエイズ陰謀論に傾倒し、治療を拒否しました。晩年、胸筋の移植手術を受けるも、感染症により摘出手術を受けています。

モリソンは、独身時代からHIV感染発覚まで、多くの女性と関係を持ったことで知られています。HIV感染を公表する際、「私と関係を持った女性は検査を受けて欲しい」と呼びかけたほどでした。彼の人生は、リング上での輝かしい成功と、私生活における数々の問題が混在したものでした。

逮捕歴

モリソンは、数々の逮捕歴を持っています。1996年に武器輸送で逮捕されたのを皮切りに、飲酒運転、薬物所持、銃器不法所持など、様々な罪で逮捕され、入出所を繰り返しました。2000年には懲役2年の判決を受け、14ヶ月間服役。2011年には、現役時代に1000万ドル以上稼いでいたにも関わらず、無一文状態となっていました。

死と遺産

2013年8月23日、モリソンの母親が、モリソンがエイズの末期で話すことができず、人工呼吸器を付けていることを公表しました。しかし、2年前に再婚した妻は一貫してモリソンがエイズであることを否定していました。2013年9月1日、モリソンは44歳でこの世を去りました。

彼の息子であるテリー・モリソンとジェイムズ・マッケンジー・モリソンは、共にプロボクサーとして活躍しており、父親の遺志を継いでいます。

モリソンの生涯は、HBOのドキュメンタリーで詳細に語られています。それは、彼の栄光と挫折、そして複雑な内面を描いた、忘れがたい物語です。

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