トム・ハンクスの大迷宮

トム・ハンクスの大迷宮

『トム・ハンクスの大迷宮』（Mazes and Monsters）は、1982年に製作されたアメリカのテレビ映画です。当時26歳だったトム・ハンクスが初主演を務め、若者たちがテーブルトークRPGに没頭する姿を描いています。

背景

この映画は、ローナ・ジャフィの小説『Mazes and Monsters』を原作としています。ジャフィは、当時メディアを騒がせていた「エグバート事件」に着想を得て、この小説を執筆しました。映画のタイトルは原作と同じですが、製作当初は「Dungeons & Dragons」という仮タイトルが用いられていました。これは、作中で取り上げられるゲームが「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を暗示しているためです。

エグバート事件

エグバート事件とは、ミシガン州立大学の学生だったジェームス・ダラス・エグバートIII世が失踪した事件です。彼はコンピュータ科学の才能を持つ天才でしたが、学業のプレッシャーや薬物依存、同性愛者であることによる悩みなどから精神的に不安定でした。1979年8月、彼は遺書を残して大学の地下共同溝に入り、薬物自殺を図りましたが失敗。その後、彼は友人宅を転々とし、行方をくらましました。警察や私立探偵による捜索が行われましたが、探偵が「地下でゲームに興じているのではないか」と推測したことから、メディアは「『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に没入しすぎた少年の失踪事件」として大々的に報道しました。ジャフィの小説は、これらの報道に基づいて執筆されました。エグバート自身は「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をプレイしたことはありましたが、詳しいプレイヤーではありませんでした。

その後、エグバートはルイジアナ州の恋人宅から探偵に連絡を取り、事件と彼の個人的な問題について公表しないという約束が交わされた上で、叔父の保護下に入りました。しかし、その翌年にショットガンで自殺しました。これは彼にとって3度目の自殺未遂でした。私立探偵によって執筆された書籍が出版され、事件に関する事実が明らかになったのは、彼の死後4年経ってからのことでした。

あらすじ

映画は、報道リポーターが洞窟を捜索する警官に話を聞く場面から始まります。警官は「"Mazes and Monsters"は手に負えない」と述べています。このシーンは物語の後半で再び登場します。

主人公のロビーは、大学で新しい生活を始め、ジェイジェイ、ケイト、ダニエルといった若者たちと友人になります。彼らは皆、テーブルトークRPG"Mazes and Monsters"のファンであり、それぞれ悩みを抱えています。ロビーは、アルコール依存症の母親と厳格な父親との関係、そして行方不明の兄ホールについて悩んでいます。

友人たちは、欠員が出たゲームセッションにロビーを誘います。過去にゲームに熱中しすぎて学校を退学になった経験のあるロビーは、当初は躊躇しますが、最終的には参加することになります。ロビーとケイトは、ゲームを通じて親密な関係になります。ロビーはケイトに、夜中に兄の夢を見てうなされることがあることを告白します。孤独を感じているジェイジェイは、自殺する場所を探して地元の立ち入り禁止の洞窟に入りますが、そこが「ライブRPG」の舞台に最適であることに気づきます。

ジェイジェイは、その後のセッションで自分のキャラクターを殺し、他のメンバーに新しいキャンペーンを提案します。彼らはジェイジェイがゲームマスターを務めるゲームの一環として洞窟に入ります。しかし、ロビーはそこで幻覚を見て、想像上のモンスターに襲われます。以来、ロビーの様子がおかしくなり、自分のキャラクターである僧侶になりきり、「禁欲のため」と言ってケイトと別れてしまいます。

ロビーは夢の中で「偉大なるホール」から「『二つの塔』へ行け」と告げられ、行方をくらまします。友人たちはロビーが残した地図を頼りに彼を追跡し、ニューヨーク世界貿易センターの南展望台でロビーを捕まえます。ロビーはホールに会うためには、そこから飛び降りて魔法を唱える必要があると考えていました。また、ロビーの兄は数年前に亡くなっていたことも明らかになります。

その後、友人たちは両親の元で暮らすロビーを訪れますが、彼は完全にファンタジーの世界で生きている状態です。友人たちが「最後にもう一度だけ」ロビーのゲームに付き合ってあげるシーンで、映画は幕を閉じます。

キャスト

ロビー：トム・ハンクス
ジェイジェイ：クリス・メイクピース
ケイト：ウェンディ・クルーソン
ダニエル：デヴィッド・ウォレス

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