トモエガモ

トモエガモ（Sibirionetta formosa）

トモエガモはカモ科に属する野鳥であり、冬季には我が国に渡来することで知られています。今回はこの美しいカモの形態、生態、分布、そして人間との関係について詳しく説明します。

形態

トモエガモの雄は冬羽の時期に特徴的な外観を持ちます。額から後頭部にかけては黒色で、両側には細い白い線が見られます。特に目の周りには渦を巻いた巴模様があり、その下から喉にかけて黒い細い線が走っています。目の後ろからは緑色の線が後頭部にかけて伸びており、腮と喉は黒色で、左右の目の下から伸びた黒筋が繋がり「V」字型を形作っています。

背中や尾筒は褐色で、羽根の先端は明るい色合いを見せます。また、肩羽の外側は灰色で、密生した黒い縞模様が特徴です。胸は上部ほど濃く、腹部は淡い色合いを呈し、全体的に褐色の羽衣に黒斑点が散在します。雌は全体的に褐色で黒褐色の斑紋が入っており、嘴基部には白い斑紋があります。

オスの非繁殖羽、すなわちエクリプスの時期には、全体が褐色となり、顔には不明確な黒い筋模様が現れます。トモエガモの特徴として、雌と幼鳥はふくよかな体つきを持ち、比較的小型のカモとして知られています。

生態

非繁殖地においてトモエガモは湖沼や河川の近くに生息し、時折海岸に飛来することもあります。繁殖期にはツンドラや森林に囲まれた湖、湿地帯や水辺の草原を好む傾向があります。生活スタイルとしては、通常は数羽から数十羽の群れで行動謳い、大規模な群れでは500羽以上になることもあります。

食性は主に草食系であり、穀物類、特に小麦やヒエに対して良い反応を示します。観察報告では冬季に島根県でドングリを食べている姿も見られ、彼らの食生活は多様です。また、シベリアの寒冷地で繁殖し、冬季には中国東部や日本、朝鮮半島、台湾へと南下します。

分布

トモエガモは東アジアに広く分布しており、ロシア極東地域から中国東北部、そして日本列島に至ります。繁殖の際はシベリア東部に生息し、南下する冬季には越冬地として日本や近隣のアジア諸国に移動します。彼らの模式標本はバイカル湖で採取されたもので、この地名が英名の由来となっています。

人間との関係

トモエガモは食用として利用されており、古くから「アジガモ」などの名前で呼ばれてきました。肉の味は良好であり、他のカモと比べると食味では劣るものの、一定の需要があったことが記録されています。しかし、現在日本では狩猟対象に指定されておらず、保護対象となっています。

種の保全状況

国際自然保護連合のレッドリストではトモエガモは低危険種とされ、個体数は増加傾向にある一方で、日本の環境省による評価では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。生息地の破壊や乱獲が懸念される状況ですが、1993年には韓国の保護区で数万羽が生息しているとの報告もあります。

バードストライク

近年、越冬地での生息数が急激に増えており、特に島根県や千葉県では多くのトモエガモが観察されています。国土交通省によると、この状況から注意が必要な野鳥として指定されたこともあります。

結語

トモエガモはその美しい形態と独特の生態から、多くの人々の関心を引く種です。春に向かうと、その群れが越冬から戻っていく様子を観察することができ、自然との調和を感じる貴重な存在です。

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