トヨタ・ハイブリッド・システム

トヨタ・ハイブリッドシステムTHS：進化の歴史と技術革新

トヨタ自動車が開発したハイブリッドカーシステム「トヨタ・ハイブリッドシステム（THS）」は、1997年の初代プリウスに搭載された世界初の量産ハイブリッドシステムとして知られています。THSは、発電用モーター（MG1）と駆動・回生ブレーキ用モーター（MG2）の2つのモーターと、アトキンソンサイクルエンジンを組み合わせたスプリット式ハイブリッドシステムです。遊星ギアによる動力分割機構と高度な制御技術により、エンジンとモーターの協調制御を最適化し、高い燃費効率とスムーズな走行を実現しています。

THSの系譜：技術革新の歩み

トヨタのハイブリッド研究は1975年にまで遡り、オイルショックを背景とした省エネルギー技術の開発から始まりました。初期の研究では、ガスタービンエンジンやEVの開発を経て、THSへとつながる技術が蓄積されていきました。

第1世代 (1997年)：世界初の量産ハイブリッドシステム

初代プリウスに搭載された第1世代THSは、ニッケル水素電池と組み合わせ、世界に先駆けて量産ハイブリッドカーを実現しました。販売価格を抑えることで、環境技術の普及に大きく貢献しました。また、エスティマハイブリッドなど、THS-CやTHS-Mといったバリエーションも存在しました。

第2世代 (2003年)：燃費向上と走行性能の進化

2代目プリウスに搭載されたTHS IIは、エンジン、モーター、バッテリー、制御技術の改良により、燃費性能が大幅に向上。時速55km以下でのEV走行を可能にする「EVモード」も搭載されました。北米カー・オブ・ザ・イヤーやヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、高い評価を獲得しました。

第3世代 (2009年): 小型化・軽量化と普及拡大

3代目プリウスに搭載されたリダクション機構付きTHS IIは、リダクションギアの開発により、システムの小型化・軽量化・低コスト化を実現しました。これにより、小型車やミニバンへのハイブリッドシステム搭載が可能となり、ハイブリッド車の普及が加速しました。プリウスPHV（プラグインハイブリッド）も登場し、多様なニーズに対応しました。

第4世代 (2015年): さらなる高効率化と多様な展開

4代目プリウスで採用されたTHS IIは、平行軸歯車化による駆動損失低減、バッテリーやPCUの小型軽量化など、細部にわたる改良が施されました。40km/Lを超える低燃費を実現し、EV走行可能な速度も向上しました。ダイナミックフォースエンジンとの組み合わせも拡大し、パワーと燃費の両立を図りました。小型車へのE-Four（四輪駆動）搭載も実現しました。

第5世代 (2022年): コンパクト化と高性能化

ノア/ヴォクシーに搭載された第5世代THS（トヨタシリーズパラレルハイブリッド）は、電動モジュールの更なる小型化と効率化、PMモーター化によるE-Fourの高性能化などが特徴です。先読みエコドライブ機能も搭載され、更なる低燃費化を実現しています。16代目クラウンのRSグレードでは、1モーター式のデュアルブーストハイブリッドが復活しました。

モータースポーツへの展開：THS-R

トヨタは、2005年からモータースポーツ分野にもTHS技術を展開し、耐久レースなどで得られたノウハウを市販車にフィードバックしました。THS-Rは、スーパーキャパシタを採用したレース専用のハイブリッドシステムであり、ル・マン24時間レース優勝など、数々の成功を収めています。

他社との協業とOEM供給

THSは、日産やマツダなど他社にも供給されており、それぞれの車種に合わせたチューニングが施されています。しかし、THSの複雑さゆえに、他社への展開は限定的でした。ダイハツ、スズキなどへは、OEM供給が広く行われています。

まとめ

THSは、世界初の量産ハイブリッドシステムとして誕生し、長年にわたる技術革新を通じて、高い燃費効率と走行性能を両立させてきました。今後も、環境規制の強化や多様化するユーザーニーズに対応するため、更なる進化が期待されます。

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