トヨタ・90C-V

トヨタ・90C-V: グループCカーの進化

概要

トヨタの90C-Vは、1990年からの全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権（JSPC）、世界スポーツプロトタイプカー選手権（WSPC）、およびル・マン24時間レースに向けて開発されたグループCカーです。このモデルは前年の89C-Vの進化版であり、特筆すべきはキャッツアイ型ヘッドライトから一般的な4灯型ヘッドライトに変更されたことです。

90C-Vは89C-Vと同じく3.2リットルのV型8気筒ツインターボエンジン（R32V型）を搭載しましたが、シーズン中には新たに3.6リットルにサイズアップされたR36V型エンジンも投入されました。エンジンの取り付け方も変更され、89C-Vの前傾マウントから水平マウントに改良されました。ブレーキローターもカーボン素材に変えられましたが、信頼性を考慮してル・マンではスチール製のものを使用しました。タイヤはトムスがブリヂストンを、サードがダンロップを選択しました。

戦績

90C-VはJSPCの開幕戦富士500kmにトムスの1台のみがエントリーし、見事に優勝を果たしました。この勝利は、トヨタにとって晴天のレースでの初めての勝利でした。しかし、ニッサンが15秒差で2位に入るなど、競争は厳しかったです。

第2戦富士1000kmでは、天候によってレースが中止となり、第3戦富士500マイルではトムスがR36V搭載の90C-Vで出走しましたが、エンジントラブルに見舞われ、その対応に苦しみました。第4戦鈴鹿1000kmでは、トムスが2台エントリーしましたが、ニッサンに完敗し、優勝を逃しました。

第5戦菅生でサードは89C-Vに戻しましたが、結果は芳しくなく、トヨタ勢の中で最上位はサードの5位という結果でした。最終戦の富士1000kmでトムスは89C-Vに戻し、90C-Vは37号車の1台のみとなりましたが、こちらもミッショントラブルでリタイアしました。サードは89C-Vで勝利を収めるなど、トヨタ勢全体としては明暗が分かれる結果となりました。

1991年の開幕戦には3台の90C-Vが参加しましたが、ニッサンのペースに追いつかず、入賞はなりませんでした。第2戦では91C-Vに移行し、90C-Vはここでの使用が最後となりました。

1990年のル・マン24時間レース

1990年のル・マンでは前年の失敗を踏まえ、完走を目指す戦略に変更しました。トムスとサードからなる3台の体制で挑み、特に24時間耐久レース重視のアプローチが見受けられました。予選ではまずまずの順位を獲得するも、決勝では途中でリタイアする車両が出る中、36号車がマシントラブルから回復し、6位でゴール。トヨタとして初めてのル・マン入賞を達成しました。

1990年のWSPC

1990年のWSPCでは、開幕戦鈴鹿に参戦し、再びトムスGBが出場しました。ここでも好調なスタートを切り、決勝では36号車が4位に入賞します。鈴鹿以降の欧州ラウンドでは他のマシンと並行して参戦しましたが、安定した性能を発揮できず、最終的にはポイント獲得には至りませんでした。特に開発過程での寸法の妥協が操縦性に悪影響を及ぼしたという専門家の意見があり、雨天時の安定性には課題が残りました。

総評

90C-Vはトヨタにとって重要なモデルであり、耐久レースでの成果や、初めてのル・マン入賞など、記憶に残る成果を残しました。次世代のマシンへの布石とも言えるこのモデルは、トヨタのレース活動における重要なステップとなりました。

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