トヨタ・FCHV

トヨタFCHV：燃料電池技術の先駆け

トヨタFCHV（Fuel Cell Hybrid Vehicle）は、トヨタ自動車が開発した燃料電池自動車です。燃料電池と二次電池を組み合わせたハイブリッドシステムを搭載し、環境負荷の低減を目指しました。その開発の経緯、技術的な特徴、そして派生車種について解説します。

概要

2002年12月、トヨタはFCHVの限定リースを日本とアメリカで開始しました。初期のリース先は、内閣府、国土交通省、経済産業省、環境省といった中央官庁が中心でした。ベース車両はクルーガー（SUV）で、リース価格は日本で月額120万円、アメリカで1万ドルでした。

FCHVの動力源は、最大出力90kWのトヨタ製燃料電池スタック「トヨタFCスタック」と、21kWのニッケル水素電池です。これらのエネルギー源で80kWのモーターを駆動します。燃料電池スタックと二次電池はパワーコントロールユニット（PCU）で接続され、走行状況に合わせて最適に制御されます。燃料は高圧水素を使用し、35MPaの高圧タンクに搭載。初期モデルの航続距離は10・15モードで330kmでした。

トヨタは自社製の燃料電池スタックを搭載することで、燃料電池技術における高い技術力をアピールしました。また、ボディーパネルの一部にアルミを採用したり、リヤスポイラーや床下フラット化による空力特性の改善、CO2エアコンの搭載など、多くの先進技術が投入されています。

FCHV-adv（アドバンスド）

2007年には、改良版であるFCHV-advが登場しました。水素タンクの充填圧力を70MPaに高め、システムの改良と合わせて航続距離を830kmに延長しています。

歴史

FCHVの開発は1996年に始まりました。

1996年：実験車FCHVを開発
1997年：メタノール改質器搭載型FCHVを開発
1999年：FCHVを発表
2001年：水素吸蔵合金タンク搭載型や高圧水素タンク搭載型のFCHVを開発
2002年：FCHV-4をベースとしたFCHVを発表、日本とアメリカで限定リースを開始

その後、地方自治体や民間企業へのリースも開始され、各種イベントでの展示や走行テストも行われました。2007年には水素充填圧力を高めたFCHVアドバンスドが登場し、航続距離が大幅に向上しました。

派生車種

FCHVの技術は、路線バスにも応用されました。

FCHV-BUS：日野自動車と共同開発された燃料電池バス。3世代にわたり改良が重ねられ、東京都交通局や愛知万博などで運用されました。
FCバス：FCV「MIRAI」の技術を応用した新型燃料電池バス。ジェイ・バス小松事業所で製造され、豊田市や東京都交通局で実証実験が行われました。
SORA：FCバスの後継車種。燃料電池バスとして初めて国土交通省の型式認証を取得。国内外で展開されました。

また、トヨタグループでは、ダイハツ工業が軽自動車版の燃料電池車を開発し、豊田自動織機が燃料電池フォークリフトを開発するなど、幅広い分野で燃料電池技術の応用が進められました。

まとめ

トヨタFCHVは、燃料電池自動車の黎明期を支えた重要なモデルです。燃料電池技術の実用化に向けた取り組みは、後のMIRAIやFCバスの開発に繋がり、現在の燃料電池自動車の普及に貢献しています。

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