トヨタ・TF109

トヨタTF109の概要

トヨタTF109は、2009年のF1世界選手権に向けてトヨタが設計したフォーミュラ1カーです。シャーシ部門のシニア・ゼネラル・マネージャーであるパスカル・バセロンが率いるチームによって開発され、2009年には開幕戦から最終戦まで実際のレースに投入されました。また、2011年にはF1のタイヤサプライヤーとしてピレリのテストカーとしても活躍しています。

開発とデザイン

TF109は2009年1月20日にポルトガルのアルガルヴェ・サーキットでシェイクダウンが行われました。そのデザインは前年のTF108から大きく変わり、空力関連の新しいレギュレーションに適合する形になりました。特にフロントノーズは高い位置にあり、フロントウィングとの隙間が大きく開いているため、空気をスムーズに流せる構造になっています。ノーズは細めで短く、ウィングステーは前方に突き出してフロントウィングを支えています。フロントウィングは直線的なエレメントからなり、翼端板はタイヤとの空気流の干渉を考慮した形になっています。

サイドポンツーンには小さなフィンが付いており、バージボードも引き続き採用されています。CFはシャークフィンを一時的に廃止しましたが、シェイクダウンではTF108と同様のシャークフィンが装着されていました。リヤウイングの形状はTF108に引き続き、独特の曲線を持った翼端板が特徴です。また、シーズン中には新たな空力パーツが取り入れられ、他チームにも影響を与えるほどの革新性を持っていました。

パフォーマンスと結果

シーズンの開幕戦、オーストラリアGPではリアウィングの規定違反により予選タイムが抹消されましたが、決勝では3位と4位を獲得しました。第4戦のバーレーンGPでは予選でフロントローを独占するものの、レースでは戦略ミスが響き、初優勝は達成できませんでした。第6戦のモナコGPではサスペンションの設定に悩み予選で最後尾になってしまいますが、その後の改善で中盤戦以降は安定した成績を収めました。

第14戦シンガポールGPでは改良されたサスペンションを投入し、連続して2位を獲得。ティモ・グロック選手は怪我により交替し、残りの2戦には小林可夢偉選手がドライブしました。最終戦のアブダビGPではチーム全体でのダブル入賞を果たし、シーズンを良い形で締めくくりました。

技術仕様

TF109はカーボンファイバー製のハニカム構造モノコックを使用しており、全長4,636mm、全幅1,800mm、全高950mmのサイズを持っています。ブレーキにはブレンボ製キャリパーを採用し、タイヤはブリヂストン製です。エンジンはV型8気筒のRVX-09で、最高出力は約740馬力で、レギュレーションにより最高回転数は18,000rpmに制限されています。最初はKERSの搭載予定がありましたが、開幕戦から搭載されないことが決定しました。

ピレリテストカーとしての役割

2011年からはピレリがF1のタイヤサプライヤーとなった際、TF109はタイヤテストのための車両として使用されました。最初のテストではニック・ハイドフェルドがドライバーを務めましたが、後にロマン・グロージャンが交代。他のチームに先駆けてタイヤの性能を試験する目的で選ばれたTF109は、競争力と信頼性を兼ね備えた車両として重宝されました。2020年には、慈善オークションに出品されることもありました。

以上のように、トヨタTF109は技術革新やデザインの進化が感じられるマシンであり、F1の歴史の中で特別な足跡を残したモデルとなっています。

もう一度検索