トライアンフ (エンジン)

トライアンフとは

トライアンフは、イギリスのメリデン・トライアンフ社が製造したオートバイエンジン「T-120型」を基にした競走用エンジンです。一般的には「トラ」と略称され、1950年から1993年の間に幅広く活躍しました。

ダート時代

トライアンフは1950年のオートレースの開始からその名を知られています。最初はさまざまな排気量のエンジンが使われていましたが、次第に649ccのエンジンが主流となりました。始めのころはその馬力が高過ぎて乗りこなすのが難しいと言われたものの、直線でのパワーを活かし、非常に人気を博しました。

「オートの神様」と称される広瀬登喜夫や「ダートの鬼」と称された岡部光男など、有名選手たちがこのトライアンフを搭載した車両で活躍しました。黎明期には30種以上のエンジンが使用されましたが、その中でも特にトライアンフは高い人気を誇っていました。

舗装路時代

1967年から1968年にかけて全オートレース場が舗装路に改修されたことがトライアンフに影響を及ぼしました。強力な馬力を持ちながらも、その特性を十分に発揮できずに苦境に立たされました。しかし、三角タイヤの導入により、コーナリング性能や加速の安定性が向上し、再びトライアンフはオートレース界の中心に返り咲きました。

特にトライアンフの特徴は、OHV二気筒エンジンの優れた耐久性とメンテナンスの簡便さでした。選手たちにとって故障が少ないこのエンジンは重宝されましたが、逆に操縦が難解で、乗りこなすのには時間がかかるとも言われました。

トライアンフ社の倒産と衝撃

残念ながら1983年にメリデン・トライアンフ社が倒産し、オートレース界に大きな打撃を与えました。エンジンや部品が手に入らなくなる選手もいたため、一部の選手は海外に部品を入手するために訪れるほどでした。この状況を受けて、他のメーカーもトライアンフに似たエンジンを開発しましたが、選手たちの信頼が高かったため、トライアンフが完全に取って代わることはありませんでした。

栄光の選手たち

トライアンフ全盛期には多くの成功を収めた選手がいます。「ミスター・オート」と呼ばれた飯塚将光は、数多くのタイトルをトライアンフ搭載車で獲得しました。そのほかにも整備技術に優れた選手たちや、さまざまな選手から愛されてきました。

憧れの的、トライアンフ

トライアンフは多くの選手にとって憧れのマシンでしたが、1984年以降は部品が入手困難になり、特に20期以降の選手たちの多くがトライアンフに乗る機会を逃しました。最近ではオートレースのイベント走行で、往年の選手たちがトライアンフに乗ってその魅力を再現する機会も増えています。

トライアンフの歴史は42年にわたり、そのエンジンやデザインは多くの選手やファンに親しまれてきました。そのため、今でもトライアンフはオートレース界の象徴的な存在として語り継がれています。

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