トラウトマン和平工作

トラウトマン和平工作

トラウトマン和平工作（トラウトマンわへいこうさく）は、1937年11月から1938年1月にかけて、日本と中華民国国民政府との間で行われた和平交渉のことです。この交渉は、当時の駐華ドイツ大使オスカー・トラウトマンを中心に、ドイツが仲介役として機能しました。この期間は、日中戦争のさなかで、上海の陥落前後という緊迫した状況下に位置していました。

背景

日中戦争が進行する中で、日本は早期の和平を望みつつも、国際的な圧力を排除し日中間の問題として解決を図る方針を取っていました。しかし、戦局が厳しさを増すにつれ、第三国の仲介を利用する可能性も模索されることとなります。その中で、ドイツとの関係が重要視され、特に中独合作を背景にしたドイツの影響力が和平交渉に影響を与えることとなります。

交渉の開始

具体的な交渉は11月初旬から始まりました。日本からは広田弘毅外相がイギリスやフランスなどの国に対し、第三国による和平斡旋を受け入れる意向を示しました。この動きは、トラウトマンを通じて日本側の条件を国民政府に伝える形で進められました。

11月3日、ブリュッセル会議の情報を受け、日本が目指している和平の条件が知られることとなります。第1次和平案が伝えられると、中国側からはその受諾について慎重な姿勢が見られました。この背景には、中国国内の権力バランスや国際社会の動向への影響があり、蔣介石自身が自国の立場を強くするために抵抗を続ける理由がありました。

交渉の進展と行き詰まり

交渉は進展し、日本側から提示された条件に対し中国がどのように応じるかという議論が続きましたが、蔣介石は事変前の状態への復帰を堅持していました。これは、和平条件を受け入れることが自国の主権や国民の支持を損なう危険性を危惧していたからです。

12月には歩み寄りの兆しが見え、蔣介石も第1次和平案を受け入れる意向を示しましたが、依然として日本に対する信頼感には疑念が残る状態でした。このため、双方の条件交渉は難航し、結果的に交渉は先延ばしとなり、状況は不透明なままに推移しました。

終焉とその影響

最終的に1938年1月に交渉は打ち切られ、近衛声明が出されることにより、日本政府は国民政府と正式に国交を断つ決定を下しました。この決定は、その後の両国関係のさらなる悪化を招く要因となり、日中戦争が長期化する結果につながりました。

トラウトマン和平工作は、日中戦争の流れを考える上で不可欠な事件であり、この後の日本と中国の関係に大きな影響を与えたのです。歴史の中であまり取り上げられないこの一連の交渉は、結果として戦争に向かう重要なステップとなりました。

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