近衛声明

近衛声明の三回の発表

近衛声明（このえせいめい）は、1938年（昭和13年）に当時の第1次近衛内閣が発表した対中国政策に関する重要な声明です。特にこれらは日中戦争（支那事変）中に出されたもので、初めての声明から三回目のものまでは重要な政治的背景を持っています。最後の第三次近衛声明は、いわゆる「近衛三原則」としても知られています。

第一回目の近衛声明

1938年1月16日に発表された第一次近衛声明は、近衛文麿首相が国民政府に対して「国民政府を対手とせず」との強い姿勢を示したものでした。この背後には、日本政府内での様々な意見の対立が存在していました。特に、関東軍は新政権の樹立を求める一方で、陸軍の中央部は早期和解を企図していました。最終的には、現中央政府との交渉を選択したが、当初の経済協定や賠償問題は受け入れられませんでした。

近衛が出した声明には、「南京攻略後、国民政府に最後の機会を与えるが、国民政府が日本の真意を理解しないので、今後は国民政府と交渉しない」といった内容が含まれていました。この声明は日本の対中政策の変化を象徴するものであり、今後の外交方針に大きな影響を与えました。

第二回目の近衛声明

その後、近衛は国家総動員法を成立させる中で、戦争目的を国民に説明しつつ、早期解決を模索する姿勢を強めました。特に、1938年5月26日の内閣改造後、宇垣一成が外相に就任し、和平を強く訴えるようになりました。しかし、国民政府との接触は依然として困難であり、逆に内部の意見の対立は続いていました。

7月には、国民政府の高宗武が来日し、近衛との接触を試みるが、日本側からの要求は蔣介石政権の下野を求めるものであり、緊張は高まりました。この複雑な情勢を背景に、11月3日には第二次近衛声明が発表され、以前の声明と矛盾するように見える内容が示されました。

第三回目の近衛声明

続いて、1938年12月22日に発表された第三次近衛声明では、善隣友好、共同防共、経済提携の三つの基本方針が示されました。この時期、日本は汪兆銘との交渉を進めていたが、国民政府内にはこの動きに対する反発が強く、混乱が生じていました。

近衛がこの声明を発表する前、汪は日本との協議を進め、意見の調整を図っていました。ただし、近衛の意図と汪の期待には食い違いがあり、声明後の政治動向は予想外の方向に進展していきました。何らかの理由で撤兵に関する具体的な条項は削除され、その背後には尾崎秀実の関与が疑われました。

国際的背景

このような流れの中、国際情勢も影響を与えていました。アメリカは中立法を維持する一方で、日本と中国の対立の激化を受けて動きを見せていました。アメリカが対中国武器供給に関与する事態が巻き起こり、これもまた日本の対中政策に圧力をかける要因となりました。

近衛声明は当時の政治背景を理解するための重要な資料であり、その内容は日本の対中国戦略や外交の複雑な様相を浮き彫りにしています。近衛内閣が直面した様々な困難とその決断は、後の日本の政治や戦争の行方に大きな影響を与えることになりました。

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