トラシュメーデース (小惑星)

小惑星トラシュメーデース (3801 Thrasymedes)

トラシュメーデース (3801 Thrasymedes) は、太陽系において木星と軌道を共有する特定の位置、すなわちラグランジュ点に安定して存在する小惑星の集団であるトロヤ群に属する天体の一つです。

木星のトロヤ群小惑星は、惑星と太陽の重力が釣り合うラグランジュ点のうち、木星の軌道上で木星より約60度先行するL4点と、約60度後続するL5点にそれぞれ集まっています。これらの小惑星は、トロイア戦争の参加者にちなんだ名前がつけられる慣習があり、特にL4点に位置する小惑星にはギリシア側の英雄たちの名が、L5点にはトロイア側の英雄たちの名が主に与えられています。トラシュメーデースは、この命名規則に則って名付けられた小惑星です。

この小惑星は、アリゾナ大学が推進した自動観測プロジェクト、スペースウォッチ計画によって発見されました。スペースウォッチ計画は、地球近傍小惑星や彗星など、太陽系内の未発見天体を広範囲にわたって体系的に捜索することを目的としていました。アリゾナ州ツーソンのキットピーク国立天文台にある望遠鏡などを用い、コンピュータ制御による観測と画像解析を行うことで、多くの新天体が発見されています。小惑星トラシュメーデースも、こうした先進的な自動サーベイ観測の成果の一つとして、カタログに追加されました。

その名称は、ギリシア神話に登場する人物、トラシュメーデースに由来しています。彼は、伝説的な賢者でありピュロス王であるネストールの息子であり、トロイア戦争におけるギリシア側の著名な戦士の一人です。ホメロスの叙事詩『イーリアス』にもその名が登場し、父ネストールと共にトロイア軍と戦いました。トロヤ群小惑星の命名において、ギリシア側の英雄にちなんだ名前が与えられる場合、その小惑星は一般的にL4点に位置するとされています。トラシュメーデースにこの名が冠されたのは、彼がギリシア神話の重要な人物であること、そしてトロヤ群小惑星の命名ルールに基づいています。

このように、小惑星トラシュメーデースは、その天文学的な分類（木星のトロヤ群）、発見の経緯（スペースウォッチ計画）、そして神話に由来する命名という点で、太陽系小天体研究と文化・歴史が交差する興味深い事例と言えます。整理番号3801番が付与されたこの小惑星は、宇宙の遥か彼方で静かにその軌道を巡っています。

関連項目

小惑星の一覧 (3001-4000)

外部リンク

Thrasymedesの軌道要素（JPL、英語）

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