トラック野郎・突撃一番星

トラック野郎・突撃一番星：SFブームとトラック野郎の痛快な出会い

1978年、日本中が『未知との遭遇』や『スター・ウォーズ』などのSF映画に熱狂する中、東映製作・配給による人気シリーズ「トラック野郎」の第7作、『トラック野郎・突撃一番星』が公開されました。菅原文太演じる主人公、星桃次郎（一番星）の活躍を中心に、ユーモラスな展開とドラマチックな展開が織りなされた本作は、8億3000万円という配給収入を記録し、1978年の邦画配給収入ランキングで第10位にランクインする大ヒットとなりました。

本作の見どころの一つは、せんだみつお演じる桶川玉三郎（三番星）のシリーズ初登場です。軽妙洒脱なキャラクターで物語に新たな風を吹き込み、桃次郎たちと織りなす掛け合いは本作の大きな魅力となっています。また、本作では桃次郎たちのライバルとして登場する矢野駿介（川谷拓三）が、シリーズ唯一のトラック運転手ではない人物として描かれており、物語に緊張感と意外性を加えています。

物語は、桃次郎がUFOを模した装飾を施した愛車「一番星号」で、空を駆け巡る場面から始まります。 夢か現実か、不思議な女性の声を受信した桃次郎は、鳥羽へ向かうフェリーに乗り込みます。相棒の松下金造（愛川欽也、通称ヤモメのジョナサン）と共に、桃次郎は船上で出会った美女・小百合（樹れい子）とその兄を名乗るセールスマン、玉三郎と出会います。小百合の巧みな誘惑と玉三郎の巧みなセールストークにまんまと騙され、粗悪な背広を購入してしまう桃次郎とジョナサン。

その後、夜の国道でトラックを走らせていると、突如白いウェットスーツ姿の月田えり子（原田美枝子）が現れます。桃次郎は、彼女をUFOの乗組員と勘違いし、一目惚れしてしまいます。えり子との出会いをきっかけに、玉三郎、そして真珠の研究者である矢野駿介との関わりが深まり、物語はさらに複雑に、そして面白く展開していきます。

本作では、玉三郎の父親である桶川半兵衛（辰巳柳太郎）との交流も重要な要素となっています。 半兵衛は玉三郎が運送会社の社長になったと信じ込んでおり、そのウソをきっかけに、桃次郎と仲間たちは玉三郎を社長に仕立てる大作戦に乗り出します。この作戦を通して、桃次郎たちの友情や、人情味あふれる姿が描かれています。

物語は、えり子と駿介の恋愛模様、ジョナサンの失意と新たな出会い、そして桃次郎のえり子へのプロポーズといった、様々な人間ドラマが交錯しながら進んでいきます。クライマックスでは、駿介が遭難する事件が発生し、桃次郎は彼を救うために奔走します。救急医療の問題や、病院の受け入れ拒否といった社会問題にも触れながら、桃次郎の人間味あふれる行動と、仲間たちの絆が描かれています。

『トラック野郎・突撃一番星』は、単なるコメディ映画ではありません。 SFブームという時代の流れを背景に、友情、愛情、そして社会問題といった様々なテーマが盛り込まれた、奥深い作品です。軽快なテンポと、個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語は、シリーズファンのみならず、多くの人々を魅了することでしょう。 また、本作には『一日だけの淑女』を思わせるシーンや、松下電器の社歌を替え歌にしたシーンなど、様々な映画や音楽へのオマージュも散りばめられています。これらの細やかな演出も、本作の魅力の一つと言えるでしょう。

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