トラディショナル・スタイル

トラディショナル・スタイル

トラディショナル・スタイル（Traditional Style）は、服装に関する用語であり、特に伝統的なメンズファッションを指します。主にイギリスの「ブリティッシュ・トラディショナル」とアメリカの「アメリカン・トラディショナル」という二つのスタイルが存在します。

ブリティッシュ・トラディショナル

ブリティッシュ・トラディショナルは、イギリスの服装の中でも、スーツスタイルの起源となるものです。このスタイルは3つボタンのスーツや3ピース、しっかりした肩パッド、ウエストの絞り、そして低めのラペルが特徴です。これにより、特有のシルエットとフォーマル感が生まれ、それがイギリスの伝統的な紳士服として知られています。

アメリカン・トラディショナル

一方、アメリカン・トラディショナルは、ブリティッシュ・トラディショナルがアメリカに進出する際に、アメリカの合理的な価値観を取り入れて作られたスタイルです。このスタイルでは、段返り3つボタンやナチュラルショルダー、ウエスト絞りのないボックス型のシルエットが見られます。特にアメリカ東部の伝統的な織物が用いられることが多く、その結果、季節を問わず着やすく、機能的でスポーティな印象を与えます。

トラッドの文化的背景

日本国内では、トラディショナル・スタイルは略して「トラッド」と呼ばれ、特にカジュアルな装いとして広まっています。このスタイルはただの服装に留まらず、特有の生活様式や文化的価値が背後にあり、アメリカやイギリスにおいては上流階級の象徴と認識されています。例として、アメリカ東海岸では政治家や弁護士、医師などがトラッドを着用し、その服装を通じて自身の出自や政治的信条を表現することがあります。

日本では1960年代に「みゆき族」が登場し、アイビールックとして知られるファッションが流行しました。このスタイルは、当時の男性たちがアイビースーツを着用し、ファッションの一環として取り入れられました。以降もトラッドは毎10年ごとにブームが起こり、独自の進化を遂げていきました。特に1980年代には「渋谷カジュアル」と呼ばれるスタイルが登場し、ストリートファッションとトラッドの融合が見られました。

トラッドのパロディとしての側面

トラッドは過去に、上流階級の文化を象徴するものとして批判されることもありました。特に芸術家のアンディ・ウォーホルの服装はその象徴的な存在です。また、1970年代後半にはゲイ・カルチャーがトラッドをパロディ的に取り入れることによって、ファッションの一ジャンルとして認知されるようになりました。

現代におけるトラッドの復活

最近になっても、トラッドは着こなしのルールやスタイルを守り続けています。近年のファッションでは、特に女性向けの衣類においてトラッドの回帰が見られ、セクシュアリティの変化とも関連していると言われています。スタイルとして禁欲的でストイックな要素が強まり、それによって男性を意識したファッションから脱却しつつあると思われます。

現代において、映画『シングルマン』やドラマ『マッドメン』がトラッドの象徴的な作品とされており、文化におけるトラッドの位置づけを再認識させる要素となっています。トラディショナル・スタイルは服装を超えた文化的なアイコンとして、今なお多くの人に影響を与え続けています。

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