アイビールック

アイビールック：アメリカン・トラディショナルスタイルの系譜

アイビールックとは、1950年代にアメリカ東海岸のアイビーリーグと呼ばれる名門大学の学生や卒業生の間で流行したファッションスタイルです。その後、1960年代には日本に伝わり、独自の進化を遂げ、若者文化を象徴するスタイルとして確固たる地位を築きました。本稿では、アイビールックの歴史、特徴、そしてそのスタイルを支えたアイテムや文化的な背景について詳しく解説します。

アイビールックの誕生とアメリカでの流行

1954年、アメリカの国際衣服デザイナー協会が「アイビーリーグモデル」という紳士服のスタイルを発表しました。これは、アイビーリーグの学生たちの着こなしを基に考案されたもので、上品で洗練された印象が特徴です。七三分けのヘアスタイルに、ボタンダウンシャツ、ブレザー、チノパン、ローファーといったアイテムを組み合わせたスタイルは、すぐに若者たちの間で人気を集めました。特に1950年代後半には北東部を中心に流行し、テレビドラマの影響もあり、その知名度と人気はさらに高まりました。しかし、1960年代後半にはヒッピー文化の台頭により、アイビールックは徐々に衰退していきました。

アイビールックが日本に上陸：みゆき族とVANの貢献

日本においてアイビールックは、1960年代初頭にVANヂャケットとMEN'S CLUB誌が牽引する形で流行しました。両者は積極的にタイアップし、雑誌でアイビールックを紹介、VANヂャケットの広告を掲載するなど、効果的なプロモーションを行いました。VANヂャケットは、MEN'S CLUB誌の一部を買い取り小売店に配布することで販促活動を行い、その戦略は見事に成功しました。さらに、アイビールックの定番コーディネートを提案することで、初心者でも簡単に着こなせるように工夫したことも、人気の拡大に貢献しました。

1963年にはMEN'S CLUB誌上で「街のアイビーリーガース」というコーナーがスタートし、一般のアイビールックを着こなす人々を掲載。三洋電機はVANと連携し、アイビーを冠する電化製品を発売するなど、メディアを駆使した宣伝活動も活発に行われました。平凡パンチの創刊も、アイビールックの普及に大きく貢献しました。

1964年には、銀座のみゆき通りに集まるアイビールックの若者たちが「みゆき族」と呼ばれるようになり、原宿でもアイビールックの若者たちを見かけるようになりました。1965年には、アイビーリーグのキャンパス風景を撮影した写真集『TAKE IVY』が発表され、この写真集は2010年には英訳版がアメリカで、2011年には石津謙介生誕100年記念出版として日本で復刻販売されるなど、現在でも高い人気を誇っています。

アイビールックのスタイル：オーセンティック・アイビー

アイビールックのスタイルは、1920年代のイギリスやアメリカの上流階級のスポーツスタイルをルーツとしています。日本におけるオーセンティック・アイビーと呼ばれるスタイルは、以下のアイテムによって構成されます。

ブレザー: シングルブレストの3つボタン、ネイビーが一般的だが、ブレイジングレッドも存在。金ボタン、パッチポケット、センターベントが特徴です。
シャツ: オックスフォード織のボタンダウンシャツ。ボタンはすべて四つ穴、クロスステッチで縫い付けられます。
ネクタイ: 細めのレジメンタルタイ。プレーンノットで結び、タイピンは使用しません。
パンツ: グレーフラノのノータックパンツ。シルエットは普通型かテーパードタイプです。
靴: スリッポンタイプの革[[靴]]、ペニーローファーやタッセルローファーなどが一般的です。
コート: キャメルのステンカラーコート。
* ヘアスタイル: 七三分けのアイビーカット。

これらのアイテムを組み合わせることで、洗練されたトラディショナルスタイルを演出することが可能です。ブランドとしては、アメリカではブルックス・ブラザーズ、J.プレス、G.H.Bassなどが、日本ではVANヂャケット、JUN、リーガルなどが有名です。

アイビールックのその後と関連文化

1970年代後半には、アイビールックを基にしたプレッピーファッションが登場し、新たなスタイルが生まれました。アイビールックは、その後の日本のファッション文化にも大きな影響を与え、現在でもトラディショナルスタイルとして、多くの人々に愛され続けています。関連書籍として、『TAKE IVY』、『トラディショナルファッション』、『絵本アイビー図鑑』、『AMETORA(アメトラ) 日本がアメリカンスタイルを救った物語』などが挙げられます。

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