トラフィック (バンド)

トラフィック：ブリティッシュロック史に輝く実験的バンド

1967年、スペンサー・デイヴィス・グループを脱退したスティーヴ・ウィンウッドを中心に結成されたイングランドのロックバンド、トラフィック。1969年から1970年にかけて一度解散するものの、その後再結成し、1974年まで活動を続けました。ブリティッシュロック全盛期の60年代後半から70年代前半、彼らはロックに様々な音楽ジャンルを融合させる実験的な姿勢で、音楽シーンに大きな影響を与えました。

結成から最初の解散まで：初期の成功とメンバーの脱退

1967年4月、ウィンウッド(ボーカル、オルガン)、デイヴ・メイスン(ギター)、ジム・キャパルディ(ドラム)、クリス・ウッド(サックス、フルート)の4名によってバーミンガムで結成。クリス・ブラックウェルのアイランド・レコードと契約し、ジミー・ミラーのプロデュースの下、デビューシングル「ペイパー・サン」と「ホール・イン・マイ・シュー」はイギリスのチャートで人気を博します。

そして1967年発表のデビューアルバム『ミスター・ファンタジー』は、代表曲「ディア・ミスター・ファンタジー」を含む、彼らの音楽性を示す重要な作品となりました。全英アルバムチャート16位、Billboard 200で88位を記録する成功を収めます。翌1968年にはセカンドアルバム『トラフィック』を発表。全英チャート9位、Billboard 200で17位を記録し、シングルカットされた「フィーリン・オールライト」は後の多くのアーティストにカバーされる名曲となりました。しかし、このアルバム発表後にメイスンが脱退。さらに、1969年にはウィンウッドがエリック・クラプトン、ジンジャー・ベイカー、リック・グレッチと共にブラインド・フェイスを結成、トラフィックは一度解散しました。同年には、ライブ音源を収録したアルバム『ラスト・エグジット』が発表されています。

再結成と音楽的進化：実験性の深化とメンバー交代

ブラインド・フェイス解散後、ウィンウッドはジンジャー・ベイカーズ・エア・フォースに参加した後、キャパルディとウッドを誘いソロアルバム制作に着手。完成したアルバム『ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』(1970年)はトラフィック名義で発表され、ブリティッシュトラッドからブルース、ジャズまで幅広い音楽性を融合した、独特の世界観を構築した作品となりました。このアルバムから、彼らの実験性はさらに深化していきます。

ウィンウッド、キャパルディ、ウッドは、リック・グレッチ(ベース)、ジム・ゴードン(ドラムス)、リーバップ・クワク・バー(パーカッション)らを迎えてトラフィックとしての活動を再開。1971年にはメイスンも復帰し、ライブアルバム『ウェルカム・トゥ・ザ・キャンティーン』を発表。その後も、メンバーの入れ替えや音楽性の変化を続けながら、『ザ・ロウ・スパーク・オブ・ハイ・ヒールド・ボーイズ』(1971年)、『シュート・アウト・アット・ザ・ファンタジー・ファクトリー』(1973年)、ライブアルバム『オン・ザ・ロード』(1973年)などを発表し、精力的に活動を続けました。マッスル・ショールズ・リズムセクションとのコラボレーションも話題となりました。

しかし、1974年のアルバム『ホエン・ジ・イーグル・フライズ』発表後、ウィンウッドの健康状態の悪化によりアメリカツアーを中止。活動の見通しが立たなくなり、再び解散することとなりました。

解散後：メンバーの死と再評価

解散後、1983年にクリス・ウッドが他界。1994年にはウィンウッドとキャパルディがトラフィック名義でアルバム『ファー・フロム・ホーム』を発表し、活動を再開するも、2005年にキャパルディも他界。しかし、彼らの音楽的功績は高く評価され続け、2004年にはロックの殿堂入りを果たしました。オリジナルメンバー4名(ウィンウッド、メイスン、キャパルディ、ウッド)が受賞者として選ばれ、その功績を称えられました。

トラフィックは、その実験的な音楽性と、数々の名曲、そしてメンバー間の確執や悲劇的な出来事を通して、ブリティッシュロックシーンにおいて独特の存在感を放ち続けました。彼らの音楽は、現代においても多くのリスナーに影響を与え続けています。

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