トラフグ

トラフグの生態と人との関わり

トラフグ（虎河豚、学名：Takifugu rubripes）は、フグ目フグ科に属する魚で、日本を含む太平洋北西部や日本海、黄海、東シナ海などに広く分布しています。特に北海道付近が北限とされ、成魚は一般的に体長約70cmほどになり、小魚、甲殻類、貝類を主な食物としています。トラフグの繁殖期は水温が上がる3月から6月にかけてで、博多湾や有明海、八郎潟、七尾湾など、さまざまな地域で産卵が行われます。稚魚はこの周辺で成長し、成魚に成長するにつれて産卵場所に戻る習性を持っています。

高級食材としてのトラフグ

トラフグは、食用として非常に人気があり、特にフグ料理においては高級食材とされています。しかし、トラフグは神経毒であるテトロドトキシンを含むため、調理には特別な免許が必要です。特に毒性が強いのは肝臓と卵巣で、筋肉や皮膚、精巣は無毒ですが、腸には弱い毒が含まれています。面白いことに、生まれたての幼魚は無毒ですが、トラフグが好む毒貝であるハナムシロガイを食べることで体内に毒が蓄積されます。

近年、養殖技術が向上し、毒を持たないトラフグの養殖が進んでいます。特に栃木県や長野県では、温泉水を活用した「温泉トラフグ」生産が行われ、地域活性化にも寄与しています。ただし、過去10年間にわたってトラフグの漁獲量は減少傾向にあり、2016年には189トンにまで落ち込んでいます。齧る力が強く、口に指を入れるのは非常に危険で、漁船で捕獲されたトラフグの歯を折る「歯切り」と呼ばれる処置が行われています。

ゲノムと免疫システムの特異性

トラフグの注目すべき点は、そのゲノムにあります。トラフグのゲノムは脊椎動物の中で最小で、遺伝子密度が高いことが特徴です。これは、モデル生物としての研究において非常に役立ちます。この発見に注目したシドニー・ブレナーはトラフグのゲノムプロジェクトを立ち上げ、トラフグは生物学の研究において重要な役割を果たす存在となりました。

ゲノムプロジェクトでは、トラフグの免疫システム、特に自然免疫系に関わるTLR遺伝子が明らかになりました。ヒトは10種類のTLR分子を利用して感染症に対抗しますが、トラフグにもヒトと似たTLRが見つかっています。その一方で、トラフグにはヒトには存在しないTLR21やTLR22という分子があり、これにより微生物の認識能力がヒト以上に高いと考えられています。

結論

トラフグはその独特な生態および人との関係から、高級食材でありながら、科学研究でも重要な存在です。今後の研究や養殖の進展に期待が寄せられています。

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