トリクシー・スミス

トリクシー・スミスの生涯と業績

トリクシー・スミス（Trixie Smith、1895年 - 1943年9月21日）は、アフリカ系アメリカ人のブルース歌手、レコーディングアーティスト、ヴォードヴィル芸人、さらには俳優として名を馳せました。彼女は約48曲もの録音を残し、ブルース界において非常に重要な役割を果たしました。

生い立ち

スミスはジョージア州アトランタで生まれ育ち、いわゆる中流家庭の出身でした。彼女はアラバマ州のセルマ大学で学び、1915年ころにはニューヨークに移ることになります。ニューヨークでは、ミンストレル・ショーやT.O.B.A.（劇場所有者出演契約協会）のヴォードヴィル・サーキットに出演し、舞台経験を積んでいきました。彼女が音楽キャリアの初期に経験したこれらの活動は、その後の成功への礎となりました。

音楽キャリアの始まり

1922年、スミスはブラック・スワン（Black Swan）レーベルで初めての音源を録音しました。その中には、「My Man Rocks Me (With One Steady Roll)」という曲が含まれており、音楽史においてロックンロールという用語を録音に残した最初の例とされています。この曲は後の世代のミュージシャンたちに多大な影響を与え、リル・ジョンソンの「Rock That Thing」やアイキー・ロビンソンの「Rock Me Mama」などの歌詞にもその影響が見られます。
また、同年、ニューヨークのインターマンハッタン・カジノで行われたブルース歌唱コンテストで、「Trixie's Blues」を歌った彼女は、アリス・レスリー・カーター、デイジー・マーティン、ルシール・ヘガミンといったライバルを抑えて第1位となり、銀杯を獲得しました。

代表曲と音楽スタイル

スミスの代表的な作品の中には、「Railroad Blues」（1925年）や「The World Is Jazz Crazy and So Am I」（1925年）があります。これらの曲にはルイ・アームストロングのコルネットも絡んでおり、スミスの洗練された歌唱力が光ります。特に、彼女のレコードはジェームズ・P・ジョンソンやフレディ・カッパードといった著名な伴奏者たちとともに録音され、優れたブルースの作品と評価されています。

1924年から1925年にかけて、スミスはフレッチャー・ヘンダーソンの楽団とも活動し、その音楽活動はさらに幅を広げていきます。しかし、ブルース歌手としての道のりは平坦ではなく、生計を立てるためにはキャバレーでの演奏や、ハーレムのリンカーン劇場でのミュージカル・レヴューに出演するなど、多様な活動が求められました。

舞台と映画での活動

トリクシー・スミスは、1931年にメイ・ウエストがブロードウェイで短期間上演した『The Constant Sinner』や、その２年後にシアター・ギルド制作の『Louisiana』の舞台でも活躍しました。また、映画にも出演しており、代表作には『神の継子たち』（1938年）、『Swing!』（1938年）、『Drums o' Voodoo』（1934年）、『The Black King』（1932年）が含まれます。

1938年には、ジョン・ハモンドが主催した『フロム・スピリチュアル・トゥ・スイング』コンサートにも参加し、さらにはデッカ・レコードでの録音も行いました。彼女のデッカでの音源には、シドニー・ベシェと共演したものが多く、晩年においても精力的に活動を続けました。

最期の時

スミスは1943年、ニューヨークで病を患い、48歳でこの世を去りました。彼女の残した音楽は、今なお多くの人々に愛され、その影響は後の世代のアーティストたちに受け継がれています。トリクシー・スミスは、ブルースの歴史の中で欠かせない存在であり、多くの記録を残した才能あるアーティストでした。

もう一度検索