トリツカレ男

『トリツカレ男』の概要

『トリツカレ男』は、いしいしんじによる短編小説であり、2001年10月にビリケン出版から刊行、2006年には新潮社から文庫化されました。この作品は、一つのことに極端に取りつかれる青年、ジュゼッペを中心とした物語です。彼は「トリツカレ男」と呼ばれ、様々な興味や活動に夢中になるあまり、周囲や自身の生活に影響を及ぼす事態にしばしば直面します。

あらすじ

物語は、ジュゼッペが風船売りの少女、ペチカと出会う秋の日から始まります。彼はペチカの魅力に取りつかれ、その笑顔に隠されている“くすみ”を消すために努力することになります。このように、彼の人生は新たな興味によって次々と展開していきます。特に、彼の趣味や特技が物語の進行に大きな影響を与えるため、自由な想像力とユーモアがあふれる舞台が描かれています。

登場人物

ジュゼッペ

ジュゼッペは、本作の主人公であり、他者から「トリツカレ男」と呼ばれています。彼は一旦興味を持つと、どこまでも没頭してしまう性格で、そのため様々な分野を極めています。どんなものでも彼の視点からは興味深く、様々な趣味に挑戦する姿がユーモラスです。

ペチカ

ペチカは、風船を売る少女で、ジュゼッペが心惹かれる存在です。彼女の出自や家庭の背景が物語に深みを与えます。特に、3年前に母親と共に異国からやってきた彼女には、何かしらのミステリーが秘められているように感じられます。

ハツカネズミ

ジュゼッペがハツカネズミに取りつかれていた際に生まれたキャラクターで、特異な能力を持つ可愛らしいネズミです。彼は話すことができ、ジュゼッペとのユニークな対話が作品に色を添えます。

その他のキャラクター

物語には、レストランの主人やギャングのツイスト親分、ペチカの母親、ジュゼッペの婚約者である教諭・タタンなど、多彩なキャラクターが登場し、それぞれのストーリーが交差します。

ジュゼッペの取りつかれたもの

ジュゼッペは、オペラや三段跳び、探偵、昆虫採集、外国語の学習など、数多くのことに興味を持つ傾向があります。しかし、彼の情熱は時に周囲との軋轢を生むこともあり、その描写は彼のキャラクターをより一層魅力的にしています。

舞台と演劇

この作品は、音楽劇としても上演されました。演劇集団キャラメルボックスによる2007年及び2012年の上演があり、物語の舞台は架空のイタリアの街「アルコバレーノ」とされています。登場人物の個性が生きた演出や、仮面祭の場面などが印象に残る仕上がりです。

まとめ

『トリツカレ男』はユニークな設定と個性的なキャラクターが織りなす物語であり、読者や観客に深い感動と笑いを提供します。ジュゼッペの情熱的な冒険は、他人に影響を与えたり、逆に自分が影響される様子を通じて、愛や友情といった普遍的なテーマを探求しています。この作品を通じて、我々は取りつかれることの意義や、その背後にある感情に触れ、新たな視点を得ることでしょう。

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