トリニティ・カレッジ (オックスフォード大学)

オックスフォード大学トリニティ・カレッジ：歴史と伝統、そしてライバル関係

オックスフォード大学トリニティ・カレッジは、1555年、トーマス・ポープ卿によって創設された由緒あるカレッジです。元々は13世紀後半に設立されたダラム・カレッジの跡地に建てられ、現在も残るダラム中庭は、その歴史を物語っています。オックスフォード大学を構成するカレッジの中でも14番目に古く、比較的小規模ながら、広大な敷地を有しています。2013年時点での基金は1億420万ポンドを超え、3人の英国首相を輩出するなど、その影響力は現代においても多大なるものです。

歴史：カトリックからプロテスタントへ、そして近代へ

トリニティ・カレッジ創設の背景には、メアリー1世によるカトリック研究の復興という政治情勢がありました。ポープ卿はカレッジ創設を通じて、カトリック信仰を擁護し、自身の家名を後世に残そうとしました。創設当初は学寮長1名、フェロー12名、スカラー8名という小規模な組織でしたが、徐々に学生数が増加していきました。しかし、エリザベス1世の即位に伴い、カトリックだった初代学寮長は解任され、カレッジはプロテスタントへと転換を余儀なくされます。

17世紀に入ると、ラルフ・ケテル学寮長、ラルフ・バサースト学寮長の時代を経て、カレッジは経済的にも安定し、建物の増築や改修が進められました。バサースト学寮長時代には、クリストファー・レンが設計に参加した壮麗な大聖堂が完成し、カレッジの規模は大きく拡大しました。

18世紀以降は、経済的安定が維持され、教育改革も進められました。学位取得のための試験が厳格化される中、トリニティ・カレッジは改革に積極的に対応し、教育水準の向上に努めました。19世紀後半には、結婚の解禁や、他のカレッジ出身者へのフェロー就任の許可など、カレッジの伝統的な慣習も徐々に変化していきました。

20世紀に入ると、第一次世界大戦、第二次世界大戦の影響を受けながらも、カレッジは学生数の増加、建物の改修、設備の充実を図り、近代的なカレッジへと発展を遂げました。戦後には、女性講師の採用、女子学生の入学許可など、さらなる改革が進められ、現代のトリニティ・カレッジの姿が形作られました。

ベリオール・カレッジとのライバル関係

トリニティ・カレッジは、隣接するベリオール・カレッジと長年にわたるライバル関係にあります。このライバル関係は、スポーツ、歌、いたずらなど、様々な形で表現され、カレッジの歴史に彩りを加えています。政治的・思想的な対立も存在し、保守的なトリニティとリベラルなベリオールの間には、多くの逸話が残されています。ドロシー・L・セイヤーズの小説にもこのライバル関係が描かれており、文学作品にも影響を与えていることが分かります。

著名な卒業生

トリニティ・カレッジは、5世紀以上にわたり、政治、科学、宗教、芸術など様々な分野で活躍する人材を輩出しています。3人の英国首相（ウィリアム・ピット（初代チャタム伯爵）、フレデリック・ノース（第2代ギルフォード伯爵）、スペンサー・コンプトン（初代ウィルミントン伯））を輩出したことは、その名声を示すものです。また、オックスフォード運動の中心人物であるジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿、物理学者ヘンリー・モーズリー、探検家リチャード・フランシス・バートンなども、トリニティ・カレッジの卒業生です。

建物と大聖堂

トリニティ・カレッジは、ブロード・ストリートに面したメイン・エントランス、複数の美しい中庭、広大な芝生の庭などを有しています。10,000平方フィートの広さを誇るノリントン・ルームは、ブラックウェル書店が併設されています。大聖堂はヘンリー・オルドリッチとクリストファー・レンが設計に関わった壮麗な建物で、トリニティ・カレッジ大聖堂聖歌隊は高い評価を得ています。

まとめ

オックスフォード大学トリニティ・カレッジは、歴史と伝統に彩られた、魅力あふれるカレッジです。その歴史、建築、著名な卒業生、そしてライバル関係は、オックスフォード大学、ひいては英国の歴史を語る上で重要な要素となっています。このカレッジが今後も発展を続け、多くの優秀な人材を輩出し続けることを期待します。

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