トリブヌス・ミリトゥム

トリブヌス・ミリトゥム：古代ローマ軍団の高級幕僚

トリブヌス・ミリトゥム（tribunus militum）は、古代ローマの軍団（レギオー）における重要な役職であり、「兵士の長」を意味します。日本語では「軍団司令官」と訳されることもありますが、実際には実戦部隊の指揮官ではなく、軍団を統括する幕僚としての役割を担っていました。

共和政ローマにおけるトリブヌス・ミリトゥム

共和政ローマ時代には、トリブヌス・ミリトゥムは元老院議員クラスから選出され、1個軍団あたり6名が配属されました。例えば、執政官（コンスル）が4個軍団を率いる場合、合計24名のトリブヌス・ミリトゥムが従軍することになります。当初は執政官や独裁官が任命していましたが、紀元前311年に護民官ルキウス・アティリウスとガイウス・マルキウスが提出した法によって、トリブス民会での選挙によって選出されるようになりました。この時の定員は、4個軍団に対して16名でした。

役職と役割

各軍団に配属された6名のトリブヌス・ミリトゥムは、2名ずつ3組に分かれ、2ヶ月ごとに交代で軍団全体の統括を担当しました。これは、軍団運営の安定性を確保し、特定の人物に権力が集中するのを防ぐための措置と考えられます。しかし、マリウスの軍制改革以降は、レガトゥス・レギオニス（軍団長）の配下として、より幕僚的な役割を担うようになりました。彼らはコホルス（歩兵大隊）やマニプルス（歩兵中隊）などの部隊を直接指揮することはなく、軍団全体の作戦計画や兵站、人事など、より戦略的な業務に携わっていたとされています。

トリブヌス・ミリトゥムの重要性

トリブヌス・ミリトゥムは、ローマ軍団において、戦術的な指揮官ではないものの、軍団の円滑な運営に不可欠な存在でした。彼らは元老院議員クラスの人物が務めたことから、政治的な影響力も持ち合わせており、軍団の動向がローマの政治情勢にも影響を与えることもありました。

参考文献

Tribunus militum - WCD (Wiki Classical Dictionary)（英語のフリー辞典）

関連項目

トリブヌス

もう一度検索