トリブス民会

トリブス民会：古代ローマにおける市民の意思を反映する民会

トリブス民会（ラテン語: Comitia Tributa）は、古代ローマにおいて行政に関与した民会のひとつであり、日本語では「市民会」と訳されることがあります。この民会は、ローマ市民が自らの意思を政治に反映させる重要な場でした。一般的に「市民集会」という訳語も使われることがありますが、これはローマ史における市民による集会コンティオ（contio）の定訳として使われるため、混同しないように注意が必要です。

トリブス民会の機能

トリブス民会は、全ローマ市民が参加できる民会でした。ローマ市民は、ケンソル（監察官）が実施するケンスス（国勢調査）によって、住居や資産の所在地に基づいた選挙区（トリブス）に登録されていました。トリブス民会は、各トリブスの意向を反映する場であり、ローマ市民権を持つ者であれば、パトリキ（貴族）とプレブス（平民）の区別なく参加し、国政に関与することができました。

ケントゥリア民会が各クラシス（階級）ごとに投票権を持っていたのに対し、トリブス民会では各選挙区に1つの投票権が与えられました。トリブスの数は増加し、最終的には35の選挙区となりました。トリブス民会はフォルム・ロマヌム内で行われたため、選挙の際には各トリブスの代表団がローマを訪れました。

トリブス民会では、以下の役職を選出していました。

按察官
財務官

また、紀元前311年には、護民官ルキウス・アティリウスとガイウス・マルキウスによって、トリブヌス・ミリトゥム（将校）を選出する法が制定されました。さらに、護民官マルクス・デキウスによって、艦隊の保守と艤装を担当する海軍二人官も選出されるようになりました。

トリブス民会の変遷と衰退

ルキウス・コルネリウス・スッラの改革までは、トリブス民会は裁判も行う機能を持っていました。しかし、スッラの改革によって裁判権は失われました。

トリブス民会は、ローマ市民の政治参加を促進する重要な役割を果たしましたが、共和制末期には政治的な影響力を失っていきました。

まとめ

トリブス民会は、古代ローマにおいて市民の意思を反映する重要な民会であり、ローマ市民権を持つ者が身分に関わらず政治参加できる場でした。選挙区ごとの投票権を持ち、官職の選出や法律制定に関与し、ローマの政治において重要な役割を果たしました。

参考文献

Giovanni Rotondi (1912). Leges publicae populi romani. Società Editrice Libraria
Andrew Lintott (1999). The Constitution of the Roman Republic. Oxford University Press

関連項目

民会 (ローマ)
クリア民会
ケントゥリア民会
プレブス民会（平民会）

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