トリロジー (イングヴェイ・マルムスティーンのアルバム)

トリロジー（Trilogy）

『トリロジー』（Trilogy）は、スウェーデン出身のギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンが1986年に発表した通算3作目のスタジオ・アルバムです。

前作にあたるセカンドアルバム『マーチング・アウト』からおよそ1年という間隔でリリースされた本作は、バンド編成にいくつかの変更があり、イングヴェイのキャリアにおいて新たな局面を示す作品となりました。

特筆すべきは、ヴォーカリストとしてマーク・ボールズが初めて参加したことです。彼の表現力豊かな歌声は、イングヴェイのドラマティックな楽曲と融合し、アルバム全体の雰囲気に新たな彩りを与えています。また、本作の制作に際しては、ベーシストのマルセル・ヤコブがバンドを離れたため、イングヴェイ・マルムスティーン自身がギターに加えてベースのパートも担当するという形でレコーディングが行われました。ドラムスはアンダース・ヨハンソン、キーボードはヤンス・ヨハンソンという、ヨハンソン兄弟が引き続き参加しており、強固なリズムセクションと華麗な鍵盤によるサポートがイングヴェイのギタープレイを支えています。

アルバムタイトルの『トリロジー』（Trilogy）は「三部作」を意味しますが、これはイングヴェイがソロアーティストとして発表したスタジオアルバムが本作でちょうど3作目にあたることに由来しています。さらに、アルバムにはインストゥルメンタル楽曲「Trilogy Suite Op:5」が収録されており、この楽曲が複数楽章から成る組曲形式であることも、タイトルの選択に影響を与えていると考えられます。このタイトルは、アルバムの持つ重要性や、イングヴェイのキャリアにおける節目であることを示唆していると言えるでしょう。

音楽的な特徴としては、イングヴェイの代名詞とも言えるネオクラシカルな速弾きギターが全編にわたってフィーチャーされています。当時の日本盤ジャケットには、非常に熱狂的な帯解説が付されており、「"ロック革命児"イングヴェイのギター・ソロは、究極のフレーズの連続!完成度の高い、宝石の如く輝く旋律。まさに彼は神だ!!」といった類まれな賛辞が寄せられています。この解説は、当時の音楽シーンにおけるイングヴェイの革新性と、その卓越したギターテクニックがいかに衝撃的かつ高く評価されていたかを雄弁に物語っています。

本作では、マーク・ボールズの力強いヴォーカルパートと、イングヴェイの技巧的なギターソロが緊密に絡み合い、叙情的でありながらもダイナミックな楽曲群が収められています。イングヴェイ自身がベースを兼任したことも、サウンドプロダクションに何らかの影響を与えている可能性も考えられます。

本作に参加した主なミュージシャンは以下の通りです。

イングヴェイ・マルムスティーン - ギター、ベース、コーラス
マーク・ボールズ - ヴォーカル
ヤンス・ヨハンソン - キーボード
アンダース・ヨハンソン - ドラムス

『トリロジー』は、イングヴェイ・マルムスティーンの初期キャリアにおいて重要な位置を占めるアルバムであり、特にマーク・ボールズとの初の共演作として、ファンの間でも語り継がれる作品となっています。その後のイングヴェイの音楽性やバンド編成にも影響を与えた、ネオクラシカルメタルの名盤の一つとして挙げられるでしょう。

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