トルコの地方行政区画

トルコの地方行政区分：複雑な階層構造と自治体の役割

トルコは81の県（il）からなる地方行政区分を有しています。1999年以降、この数は維持されています。各県には、中央政府の代表として内務省の官僚である知事（vali）が派遣され、県の行政府（vilayet）を統括しています。しかし、県の自治体行政における最高権限は、4年任期の民選による県議会が握っており、知事は県議会の決定に従って職務を遂行するという、興味深い権力分担が見られます。県議会は年間40日の会期を持ち、予算や行政事務の審議・承認を行います。会期外は、県議会から互選された常設の県参事会が財政審議・承認の役割を担います。

各県はさらに、複数の郡あるいは区（ilçe）に細分化されています。県庁所在地である中央地区（merkez ilçesi）を除く全ての郡区には、内務省の官僚である郡行政官（kaymakam）を長とする郡行政府（kaymakamlığı）が置かれています。これらの郡区内には、人口規模に応じて、様々なレベルの自治体が存在します。県庁所在地や郡庁所在地などの町には、民選の首長と議会を持つ市自治体（ilçe belediyesi）が設置されています。また、人口2000人以上の町には町自治体（belde belediyesi）が置かれ、人口2000人未満の集落は村（köy）として自治体機能を有します。

地方行政において最も重要な役割を担うのは、市・町自治体です。独自の条例を制定し、公共サービスを提供する重要な存在です。市・町自治体には、民選の市町長、市町議会、そして市町長や職員、市町議会議員から構成される市町参事会が設置されています。村は市・町自治体よりも権限は小さいものの、村当局と、村民から選ばれた村長と村参事会によって行政が運営されます。

イスタンブールやアンカラといった大都市は、日本の政令指定都市と類似した特別制度が適用されています。複数のilçeが集まって大都市行政区（büyük şehir）を形成し、全体を公選の市長を長とする大都市自治体（büyükşehir belediyesi）が統括します。大都市自治体は、地下鉄やバスなどの公共交通機関の運営など、区単位では対応できない広域行政を担っています。大都市行政区内の各区には、区自治体（ilçe belediyesi）や准区自治体（altı kademe belediyesi）が置かれ、それぞれに民選の区長と区議会が存在します。大都市自治体には議会がありませんが、各区自治体の代表者からなる大都市参事会が市長を補佐します。2010年代の地方行政改革により、大都市自治体の規制が緩和され、多くの県の全域が大都市自治体となりました。

県の番号付けは、基本的にアルファベット順ですが、新設県は設置時期に基づき番号が割り当てられます。例えば、1999年に設置されたデュズジェ県は81番となっています。大都市自治体以外の県の県都名は、県名と必ず一致するという特徴も持ちます。

この複雑な階層構造と自治体の権限分担は、トルコの地方行政を理解する上で重要な要素であり、中央集権と地方分権のバランスが巧妙に保たれていることを示しています。各レベルの自治体の役割と権限を理解することで、トルコの地方行政システム全体をより深く理解できるでしょう。

もう一度検索