トルチェッロ

トルチェッロ島は、イタリア北東部、ヴェネツィアの潟に浮かぶ歴史ある島です。南西にはブラーノ運河が流れ、北と東はローザ湿原とチェントレーガ湿原に囲まれています。この島は、ヴェネツィア地方で最も古くから人が定住した場所の一つで、5世紀から6世紀にかけて人々が住み始めました。最盛期には、2000世帯もの人々がこの島で生活していましたが、その後、衰退が進み、現在ではわずか10世帯ほどの住民が暮らしているに過ぎません。

島の歴史を語る上で欠かせないのが、サンタ・マリーア・アッスンタ聖堂です。現在の形に改築されたのは1000年頃で、その歴史と風格は訪れる人々を魅了します。聖堂内部には、石の板で造られた欄間の窓があり、西側の壁、入り口の内側には、ビザンティン様式の壮大なモザイク画で最後の審判が描かれています。このモザイク画は、その美しい色彩と緻密な描写で、見る者を圧倒します。

また、サンタ・フォスカ教会も重要な建築物の一つです。12世紀に建てられたこの教会は、平面形がギリシア十字型をしており、内部には建築様式を繰り返す柱頭の大理石の柱が並ぶ柱廊があります。この柱廊は、教会の静謐な雰囲気をより一層引き立てています。

聖堂の近くには、フン族の王アッティラが座っていたと伝えられる石の椅子があります。伝説によると、アッティラ王はここから島の様子を眺めていたと言われています。この石碑は、島の歴史を物語る貴重な遺産となっています。

さらに、トルチェッロ島には「悪魔の橋」と呼ばれる古い橋が残っています。この橋は、ヴェネツィアで最も古い橋の一つで、欄干が取り払われた独特の原型を今も保っています。この橋には、赤子を欲しがった悪魔の伝説が残っており、その神秘的な雰囲気が訪れる人々を魅了します。

トルチェッロ島は、その長い歴史の中で、繁栄と衰退を経験してきました。しかし、その歴史的な建造物や伝説は、今もなおこの島を訪れる人々に、過去の物語を語り続けています。静寂に包まれたこの島を訪れることで、ヴェネツィアの歴史と文化の深さに触れることができるでしょう。

もう一度検索