トレント号事件

トレント号事件とは

トレント号事件（トレントごうじけん、英: Trent Affair）は、1861年11月8日にアメリカ合衆国の海軍によって引き起こされた外交問題で、この出来事は南北戦争の緊迫した状況を代表するものとなりました。この事件は、アメリカがイギリスの郵便船RMSトレントを停船させ、南軍の外交代表であるジェイムズ・メイソンとジョン・スライデルを拘束したことから始まります。南軍はこれらの外交官を通じて、イギリスとフランスからの認知を求めていました。彼らは南部連合が独立国家としての地位を確立するために、国外での支援を得る狙いがありました。

背景

アメリカ連合国、特にその大統領ジェファーソン・デイヴィスは、南部の綿花がヨーロッパの繊維産業において重要な役割を果たしていることから、ヨーロッパ諸国との外交的関係を模索していました。一方で、北軍の外交政策は南軍への認知を妨げるものであり、アメリカ合衆国は国際法に従った行動をとることを重視していました。しかし、世論は南軍に対する感情的な支持に傾いていたため、この事件は緊張を高めました。

トレント号の捕獲

アメリカ北軍の海軍中佐チャールズ・ウィルクスは、トレント号がハバナを出港してイギリスに向かっていることを知り、これが南軍の外交官が載っていることを確認しました。ウィルクスは、国際法に基づいてこの船の航行を妨げ、その外交官達を拘束することが正当化されると考えました。彼の指揮する蒸気フリゲート艦USSサンジャシントはトレント号を停船させ、メイソンとスライデルを逮捕し、アメリカ艦に連行しました。これにより、アメリカとイギリスの関係は緊迫したものとなり、開戦の可能性が浮上しました。

イギリスの反応

トレント号捕獲に対するイギリスの反応は非常に敏感でした。イギリスはこの行為を自国の名誉に対する侮辱と見なし、謝罪と使節の解放を要求しました。これに対して、アメリカは当初強硬な態度を取りましたが、内心では開戦のリスクを恐れていました。エイブラハム・リンカーン大統領はこの危機を解決すべく、慎重に動き出しました。

危機の回避

事件から数週間後、アメリカはメイソンとスライデルを釈放することを決定しました。アメリカの外交顧問であるウィリアム・スワードがその決定を下し、イギリスにはまたしても謝罪なしの釈放が行われました。このようにして、アメリカとイギリスの間の危機は一応の解決を見ましたが、この事件は外交上のフラストレーションを残しました。南軍が望んでいた国際的な認知は果たされず、アメリカ連合国にとっては痛手となりました。

まとめ

トレント号事件は、アメリカ合衆国の南北戦争における外交の複雑さを示しており、アメリカとイギリスの関係がいかに微妙であったかを物語っています。この事件は、北部と南部の意図や行動が国際的な視点からどのように評価されるのかを浮き彫りにし、またしばしば戦争へと発展するリスクを孕んでいました。最終的に、この事件は戦争を未然に防ぐ一因となり、戦争後のアメリカの外交政策にも影響を及ぼしました。

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