トレーサー

トレーサーとは、液体や気体などの流体の流れ、あるいは特定の物質の動きを追跡するために用いられる微量の添加物質や性質のことです。追跡子とも呼ばれます。

概要

トレーサーとして用いられる具体的な物質には、塩、インクなどの色素、薬品、放射性同位体、煙などの微粒子などがあります。これらの物質を実験対象物に添加し、化学的検出手法、紫外線、ガンマ線カメラなどを用いて、その伝播状態や範囲を追跡調査します。

物質だけでなく、温度のように一定時間保たれる性質も、条件によってはトレーサーとして利用できます。物質トレーサーの場合、「濃度」という性質に着目していると考えることもできます。

利用例

トレーサー技術は、様々な分野で利用されています。

生体内での薬品や化学成分の伝播状況の追跡: 医薬品の体内動態や、生体内の代謝経路の解明に役立ちます。
水源や地すべり地における地下水の移動状況の把握: 水源の汚染源特定や、地すべりのメカニズム解明に貢献します。
航空機や自動車の形状評価、換気装置の最適化: 空気力学的な特性を評価し、設計の改善に役立てます。

注意点

トレーサーを使用する際には、人体や環境への影響に配慮する必要があります。特に、放射性同位体や大量の塩を使用する場合には、慎重な検討が必要です。

放射性同位体: 放射線による被ばくのリスクがあるため、使用量や期間を最小限に抑える必要があります。
大量の塩: 土壌や水質に影響を与える可能性があるため、使用場所や濃度に注意が必要です。

類似の技術

トレーサー技術と類似した技術に、同位体ラベリングがあります。同位体ラベリングは、トレーサーと同様に同位体を使用しますが、流体に混入させるのではなく、分子の中で置き換えるという点が異なります。

関連事項

フルオレセイン: 水の流れを可視化するために用いられる蛍光色素です。
トリウム（トリウム-232）: 放射性同位体トレーサーとして用いられます。
炭素（カーボン-14）: 年代測定や、生体内での物質追跡に用いられます。
ゲオルク・ド・ヘヴェシー: トレーサー研究によりノーベル化学賞を受賞しました。
メルヴィン・カルヴィン: トレーサーを用いてカルビン回路を解明し、ノーベル化学賞を受賞しました。
腫瘍学: 腫瘍の診断や治療における薬剤の追跡にトレーサーが用いられます。
ポジトロン断層法（PET）: 放射性同位体トレーサーを用いて、生体内の代謝活動を画像化する技術です。
* ボーリング: 地下水の流れを調査するために、トレーサーを注入することがあります。

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