トロ・ロッソ STR4

トロ・ロッソ STR4：2009年シーズンの挑戦と苦闘

2009年のF1世界選手権で、スクーデリア・トロ・ロッソが使用したマシン、STR4は、名デザイナー、エイドリアン・ニューウェイの手による傑作でした。レッドブル・テクノロジーが設計を担い、レッドブル・レーシングのRB5と共通する設計思想が見られます。U字断面のモノコック、プルロッド式リアサスペンション、そしてリアウィング翼端板とディフューザーの一体構造などは、その共通点を如実に示しています。

しかし、STR4とRB5には決定的な違いがありました。それは搭載エンジンです。RB5がルノーエンジンを搭載したのに対し、STR4はフェラーリエンジンを搭載していました。この違いは、マシン設計に大きな影響を与えました。トロ・ロッソのテクニカルディレクター、ジョルジオ・アスカネッリは、燃料系、冷却系、駆動系といった主要システムの設計は、トロ・ロッソの本拠地であるファエンツァで行われたと説明しています。フェラーリエンジンはルノーエンジンと比べて排熱量が大きいため、エンジンカバーの開口部を広くする必要がありました。さらに、当時注目を集めていたKERS（運動エネルギー回生システム）を搭載する設計も考慮されていたものの、最終的には搭載されませんでした。

シーズン中盤には、RB5と同様に、扁平なノーズコーンやダブルディフューザーといった空力アップデートが施されました。しかし、これらのアップデートはレッドブル・レーシングより数戦遅れて導入されました。特にダブルディフューザーは、シーズン第10戦ハンガリーGPまで導入されず、全チーム中最も遅れての導入となりました。

開幕戦オーストラリアGPでは、ルイス・ハミルトンの失格により、セバスチャン・ブエミが7位、セバスチャン・ボーデが8位と、ダブル入賞を果たしました。ブエミにとってはF1デビュー戦での入賞という快挙でした。しかし、その後は予選でQ1敗退が続き、決勝でもポイントを獲得できない苦戦が続きました。シーズン中盤には、ボーデがチームから解雇され、代わりにリザーブドライバーのハイメ・アルグエルスアリがシートを獲得しました。

前年後半戦の好調とは対照的に、2009年シーズンは苦戦を強いられ、コンストラクターズランキングでは最下位となる10位に終わりました。アスカネッリは、セバスチャン・ベッテルのレッドブル移籍による影響が予想以上に大きかったと認めています。ベッテルの抜けた穴を埋めるには至らず、チームは苦しいシーズンを送ることとなりました。

スペック

シャーシ: STR4、カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造モノコック
ホイール: Advanti Racing
タイヤ: ブリヂストン
ブレーキ: ブレンボ
エンジン: フェラーリTipo056 (V型8気筒、90度、2,398cc、最高回転数18,000rpm)
その他: アルミニウム製シリンダーブロック、32バルブ、98mmピストンボア、重量95kg以上、NGKスパークプラグ、シェル燃料/潤滑油、マニエッティ・マレリ製イグニッションとインジェクションシステム

結果

開幕戦でのダブル入賞という明るいスタートにもかかわらず、シーズンを通してSTR4は苦戦を強いられました。開発の遅れやドライバー交代など、様々な要因が絡み合い、チームはランキング最下位に沈む結果となりました。しかし、この経験は、チームの成長と、将来の成功への礎となったことは間違いありません。このシーズンを通して、チームは多くのことを学び、次なるステップへと繋がる貴重な経験を積んだのです。

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