トロール船

トロール船（Trawler）

トロール船とは、トロール網を使用して漁業を行うために設計された漁船のことを指します。このトロール網は、海底近くや特定の深度をターゲットにして魚を捕獲するためのものです。また、トロール船という呼称は、外見が似ているプレジャーボートにも使われることがあります。

トロール網の概要

トロール網は特に海底での漁業に使用される漁網の一種で、近代的なトロール網は「岩飛び式」と呼ばれ、堅牢なゴム製の車輪が付けられています。これにより、でこぼこした海底でも網が破れにくくなっています。近年では、通常水深55〜75メートルで操業しますが、900メートル以上の深海でも行われることがあります。また、漁獲物を保存するための冷蔵設備が搭載されている船も多く、規模の大きな沿海や遠洋型のトロール船では、3週間以上にわたり漁を続けることもあります。

トロール船の歴史

トロール船の起源は、中世のイングランド南西部にあるデヴォン州のブリクサムです。ここは最初のトロール船が発明された場所として知られ、初期のトロール漁法はスマックと呼ばれる引き網漁船が外輪船によって曳航される方式でした。1881年には、ビーム式トロール網を備えた蒸気トローラーであるゾディアック号が建造され、その後1892年にスコットランドで開発されたオッター・トロールが、複雑な海底地形にも対応可能となりました。オッター・トロールは1895年にはイギリスの北海漁船団の標準装備となり、現代のトロール船の基礎を築きました。

オッター・トロールによる漁獲量は、帆船時代に比べて約6倍にも達しましたが、その急激な増加は漁業資源の減少を引き起こしました。また、漁獲量の増大により魚の価格も下がり、漁民や市場にとって「大漁貧乏」という状況を生み出しました。ブリクサムから発祥したトロール船は、世界中に広まり、各地の漁船団におおきな影響を与えました。

トロール船の現代的利用

イングランドで最大のトロール漁港はハルであり、1970年代以降はスコットランド北東部のピーターヘッドがヨーロッパ最大の港となりました。1980年代には500隻ものトロール船がここを母港にし、活発な漁業が行われていましたが、その後数十年で乱獲防止のための制限が加えられ、ピーターヘッドは漁船数や水揚げ量が減少し、衰退を余儀なくされました。

軍用用途としてのトロール船

第一次世界大戦及び第二次世界大戦中、多くのトロール船が徴用され、掃海艇として利用されました。トロール船の漁法が掃海活動に似ており、乗組員がその作業に慣れていたためです。イギリスでは、これらの掃海艇に「頁面トローラー」という名称がつけられ、掃海や哨戒任務に従事しました。また、冷戦期には電気機器を装備したトロール船がスパイ活動に利用され、特にソビエト海軍が開発した見た目が漁船の電子情報収集艇が注目されました。

トロール船はその漁業的な用途に限らず、歴史の中で多様な役割を果たしてきました。現在でも、その技術やデザインは漁業の発展に寄与し続けています。

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