トンキンハウス

トンキンハウス：教育出版社からゲーム業界へ、そして終焉へ

東京書籍という老舗出版社を親会社にもつ、かつて存在したゲームソフトブランド「トンキンハウス」。その歴史は、1986年に発売された『けいさんゲーム』シリーズにまで遡ります。当初は東京書籍が直接ゲームソフトの販売を行っていましたが、1989年より「トンキンハウス」ブランドを冠した作品を発表するようになります。

1997年、ゲーム開発・販売を専門とする子会社「東京書籍メディアファクトリー」を設立。以降、同社がトンキンハウスブランドを継承し、数々のタイトルを世に送り出しました。しかし、2000年には社名を「東京書籍メディアフロー」に変更、2004年には「学習調査エデュフロント」と改称し、同年にゲーム事業から撤退。この撤退は、トンキンハウスブランド最後の作品『D→A:WHITE』の発売よりも早かったという事実が、ブランドの終焉を象徴しています。

その後、親会社である東京書籍が「トンキンハウス」ブランドを再び使用し、2005年3月には公式サイトをリニューアル。しかし、2006年2月16日、『D→A:BLACK』と『D→A:WHITE』の廉価版を最後に完全撤退、公式サイトも2008年1月31日に閉鎖されました。

トンキンハウスの初期は、主に教育的な要素を取り入れた知育ゲーム（エデュテイメント）に力を入れていました。しかし、徐々に戦略を変更し、本格的なゲームソフトの開発・販売へとシフト。良質なゲーム開発で知られるコンパイル社への開発委託や、日本ファルコムの人気PCゲームの移植など、積極的な姿勢が多くのゲームファンを惹きつけました。ファミコン全盛期には、東京書籍の出版部門との連携を生かし、『ロマンシア』や『太陽の神殿』といった自社タイトルの攻略本も発売。出版社という母体の強みを活かした展開が特徴的でした。

家庭用ゲーム機市場がCD-ROMを採用したプレイステーションやセガサターンへと移行すると、トンキンハウスのラインナップはギャルゲーを中心とした作品へと変化。時代に合わせて変化を遂げようとする姿勢も垣間見えました。

代表的なタイトルとしては、初期の教育系ゲーム『けいさんゲーム』シリーズや『いきなりミュージシャン』、『ロマンシア』、『太陽の神殿』、『暗黒神話 ヤマトタケル伝説』などがあります。トンキンハウス名義では、『ガンナック』、『サイバーナイト』シリーズ、『イースIII ワンダラーズフロムイース』（SFC版）、『イースIV MASK OF THE SUN』といった、他社タイトルの移植作品やオリジナルタイトルを多数リリース。特に『LightFantasy』シリーズは、ポップなグラフィックとライトノベル風のストーリーが特徴でしたが、実際は高い難易度で知られ、ユーザーの間で賛否両論を巻き起こしました。

『松方弘樹のスーパートローリング』のような個性的なタイトルも存在し、幅広いジャンルの作品にチャレンジしていたことが分かります。

トンキンハウスは、教育出版社である東京書籍の傘下で誕生し、知育ゲームから本格的なゲームへと進化を遂げ、多くのゲームファンに記憶される数々のタイトルを生み出しました。しかし、時代の流れや市場の変動など様々な要因が重なり、わずか20年ほどの歴史に幕を閉じました。その短いながらも濃密な歴史は、日本のゲーム業界における一つのエピソードとして、今なお語り継がれることでしょう。

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