トントン・マクート

トントン・マクートは、ハイチのフランソワ・デュヴァリエ大統領が独裁色を強める中で1958年に結成された秘密警察を母体とする準軍組織です。正式名称は国家治安義勇隊 (MVSN) とされました。

その名前は、ハイチの民間伝承に登場する「子供の誘拐魔」に由来します。クリスマスの時期、良い子の家にはサンタクロース（クレオール語でトントン・ノエル、クリスマスおじさん）が訪れる一方、悪い子の家にはナップザックおじさんや南京袋おじさんが現れて子供を連れ去ると言われています。この南京袋おじさんが「トントン・マクート」（トントン＝父さん・おじさん、マクート＝麻袋）であり、欧米でいう「ブギーマン」に相当します。

トントン・マクートは、都市部の黒人貧困層や地方地主の傭兵から構成され、その活動には自動的に恩赦が与えられました。給料は支払われず、犯罪や略奪によって生活していました。また、ブードゥー教の祭司や秘密結社のメンバーも含まれていました。

隊員たちは黒いサングラスを着用し、銃器を所持していましたが、遺体の凄惨さからマチェーテや刀を好んで使用しました。時にはブードゥー教の悪魔や神に扮してマチェーテを振りかざし、見せしめのために被害者の遺体を広場に晒すなど、反体制派を徹底的に弾圧しました。その残虐な振る舞いは、まるで暴力団のようで、国民を恐怖に陥れ、デュヴァリエ父子への表向きの忠誠を強要しました。拷問も日常的に行われ、敵に対する警告として利用されました。また、小作農から土地を奪うなど、都市部の貧困層を増大させる要因にもなりました。

フランソワ・デュヴァリエの跡を継いだ息子のジャン＝クロード・デュヴァリエが1986年に反乱によって失脚すると、トントン・マクートは一時的に解散しました。しかし、その後を継いだアンリ・ナンフィが民主化の約束を撤回し、「アタシェ」の名でトントン・マクートを復活させました。新生トントン・マクートは、ジャン＝ベルトラン・アリスティドら民主派に対するテロを頻繁に引き起こし、現在でもFRAPHなどの残党がハイチの政界に大きな影響力を持っています。

トントン・マクートを指揮したデュヴァリエ政権のナンバー2であったリュクネル・カンブローヌは、2006年9月29日にマイアミで77歳で死去しました。

関連情報：
クレメンテ・バルボ

外部リンク：
Tonton Macoute Militia, photos, Latin American Studies
* 26 Anniversary of the VSN, YouTube

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