トンブリー

トンブリーの歴史

トンブリー（ธนบุรี）は、タイのトンブリー王朝時代に金都として栄えた場所です。現在のバンコク都のトンブリー区やバーンコークヤイ区、バーンコークノイ区、プラナコーン区に位置しています。ここはチャオプラヤー川を挟んで王都を形成し、西岸には王宮があったと言われています。

アユタヤ朝時代

トンブリーの設立時期は正確には不明ですが、約16世紀中頃にチャオプラヤー川の改修作業が行われた痕跡が残っています。この時期、チャオプラヤー川はバンコクノイ付近で大きく蛇行しており、その流れはトンブリー地域を取り囲むような状態でした。後に川の流れが掘削され、現在の形になったと言われています。

元の川の流れは、今でもバンコクノイ運河やチャックプラ運河、バンクンシー運河、バンコクヤイ運河として残されています。また、バンコクヤイ運河入口近くには砦が築かれ、鉄鎖を渡すことで舟の往来が監視されるようになり、この砦がトンブリーを防衛する拠点として機能しました。やがて、トンブリーはアユタヤ朝の物資の貿易港としても発展し、17世紀初頭にはポルトガル、オランダ、中国、日本の商会が立ち並びました。この時期にワット・アルンの前身となる寺も築かれたと言われています。

シャム革命前夜

ナーラーイ王の時代、トンブリー砦は欧州式の五角形要塞に改修されました。これは王の側近コンスタンティン・フォールコンの提案によるもので、フランス軍が国内に駐留するための基地としての大規模な改修が行われました。これにより、トンブリーは激戦地へと変わり、その結果、反フランス派のペートラーチャーが勝利を収めることとなりました。フランス軍が除去された後も貿易は中国商人を介して続き、中国人居留地としての様相が強まりました。

タークシン王の遷都

1767年には泰緬戦争が起き、アユタヤ王朝が滅亡します。この時、アユタヤは壊滅的に破壊され、難を逃れたタークシン王がトンブリー王朝を再建しました。タークシン王は王都をアユタヤではなくトンブリーに定めたのは、以下の理由からです。

1. アユタヤの再建が困難だったため
2. 自身が中国系タイ人で貴族社会に基盤がなかったこと
3. トンブリーが潮州人商人の都市であり、自身の基盤に適していたため
4. フランスの要塞が残っており、防衛上有利だったため
5. トンブリーが当時唯一の貿易港として機能していたため

トンブリーの王宮は1770年頃に建設され、ワット・アルーンの隣に位置するワン・ダーン宮殿が使用されました。このエリアはトンブリー王朝の中心地としての役割を果たし、後にラーマ1世によるバンコクへの遷都が行われるまで、その地位を保ち続けました。

トンブリーの現状

時が経つにつれて、トンブリーはバンコクの一部として吸収され、1972年には行政区としてトンブリー区が設立されました。この地域は経済的に繁栄しており、高級住宅街も存在します。そのため、旧バンコク地区からは「向こう岸」とも呼ばれ、また「トン」と略されて親しまれることもあります。古くから富裕層が多く住んでいたエリアであり、現在でもその面影を残しています。

もう一度検索