タークシン

タークシン大王：トンブリー朝の創始者

タークシン大王（สมเด็จพระเจ้าตากสินมหาราช, Somdet Phra Chao Taksin Maharat）は、18世紀にタイのトンブリー朝を築いた王です。華人系の出自を持ち、混乱期にあったタイを再統一した英雄として知られています。

生い立ちと出自

タークシン大王は、1734年、潮州出身の華人である鄭鏞の子として生まれました。幼名は鄭信といい、後にタイ族の官吏チャックリー伯爵（後のラーマ1世とは別人）の養子となり、「シン」（สิน、タイ語で「宝」の意味）と名付けられました。幼少期には寺で学び、その後アユタヤで仕官しました。彼は学問にも熱心で、外国人学者に積極的に教えを請うなど、知識を深めました。21歳で出家、24歳で還俗し、王の小姓となります。その後、ターク県の監察官、知事を歴任し、この際に「タークシン」という名が広く知られるようになりました。

アユタヤ王朝の滅亡とトンブリー朝の建国

1765年、ビルマ軍が侵攻を開始し、タイは危機に瀕します。タークシンは、アユタヤの防衛に加わりますが、国王の命令に背いて大砲を撃ったことで罪を問われ、ラヨーンへ逃れます。その後、兵を集めて挙兵し、チャンタブリーを制圧。さらに潮州系華人を率いてアユタヤを目指しますが、アユタヤ王朝は既に滅亡しており、町もビルマ軍によって徹底的に破壊されていました。1767年、タークシンはチャオプラヤー川下流のトンブリーに拠点を定め、新たな王朝を樹立しました。

国土の再統一と治世

タークシンは、トンブリー朝の初代国王として、国内の反乱勢力を次々と鎮圧しました。ピサヌローク、ナコーンシータンマラート、ピマーイ、プラ・ファーンなどの諸勢力を打ち破り、ランナー王朝も服従させました。さらに、アユタヤ王朝の属国であったカンボジアやラオスも回復し、国土の再統一に成功しました。彼の治世は、15年間の大半が戦いに費やされましたが、文化面でも大きな貢献をしました。アユタヤ王朝末期に散逸した文献の収集と整理に尽力し、彼が編纂した『ラーマキエン』は、数あるバージョンの中でも最も優れていると評価されています。また、ワット・アルンラーチャワラーラームを修復するなど、仏教の保護にも力を注ぎました。

晩年と最期

タークシンは、自分が華人系であること、アユタヤ王朝の王家の血を引いていないことに強いコンプレックスを抱いていました。次第に精神状態が悪化し、「朕は阿羅漢の境地に達した」と主張し、僧侶に自分を礼拝するよう命じました。しかし、タイの[[仏教]]では僧侶が民間人を礼拝することは禁じられており、多くの高僧がこの命令を拒否。タークシンは激怒し、彼らを処罰しました。このような彼の行動は民衆の不信感を招き、各地で反乱が勃発しました。鉱山の税務官の不正も反乱を助長し、混乱の中で、サン伯爵が簒奪を企てトンブリーを攻撃、タークシンは出家を強いられました。その後、カンボジア遠征から帰還したマハー・カサットスック大公（後のラーマ1世）が民衆の支持を得て国権を掌握しました。1782年4月6日、タークシンとその一族は、ラーマ1世によって処刑され、トンブリー王朝は一代で滅亡しました。

紙幣との関係

タークシン大王は、タイにおいて非常に尊敬されている人物であり、その肖像は紙幣にも使用されています。1980年代から約20年間、20バーツ紙幣の裏面に肖像が使われていました。2015年からは、100バーツ紙幣の裏面に再び肖像が採用され、その偉業が称えられています。


タークシン大王は、激動の時代にタイを救い、再建に尽力した英雄として、その名は今もなおタイ国民に深く記憶されています。

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