トーマスカントル

トーマスカントル：ライプツィヒ聖トーマス教会の音楽を司る重責

トーマスカントル（独: Thomaskantor）は、ドイツのライプツィヒに位置する聖トーマス教会のカントル（音楽監督）を指します。この役職は、単に教会の音楽を取り仕切るだけでなく、その歴史と伝統において非常に重要な意味を持っています。

トーマスカントルの職務

トーマスカントルの主な職務は、以下の通りです。

教会合唱団の指導・育成: 聖トーマス教会少年合唱団（Thomanerchor）は世界的に有名な合唱団であり、その指導はトーマスカントルの最も重要な任務の一つです。団員の育成、練習の指導、演奏会の企画など、合唱団の活動全般を統括します。
礼拝における音楽の監督: 教会の礼拝で使用される音楽を選定し、演奏を監督します。オルガン演奏、合唱、独唱など、礼拝を彩る様々な音楽要素を総合的にプロデュースします。
付属小学校での教職: 聖トーマス教会には付属の小学校があり、トーマスカントルはそこの教員として、子供たちの音楽教育にも携わります。音楽の基礎知識や歌唱指導などを通して、次世代の音楽家を育成します。
ライプツィヒ市全体の音楽監督: トーマスカントルは、ライプツィヒ市全体の音楽活動にも影響力を持っていました。市の行事における音楽の選定や演奏、音楽祭の企画など、ライプツィヒの音楽文化の発展に貢献します。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハとトーマスカントル

トーマスカントルの歴史において最も有名な人物の一人が、ヨハン・ゼバスティアン・バッハです。バッハは1723年から1750年までトーマスカントルを務め、その間に数多くの教会音楽作品を作曲しました。バッハの代表作である「マタイ受難曲」や「ロ短調ミサ」などは、トーマスカントルとしての活動の中で生まれたものです。バッハは、トーマス教会少年合唱団を率いて毎週礼拝でカンタータを演奏し、街の様々な行事のために音楽を作曲・演奏しました。バッハの存在は、トーマスカントルの名声を高め、その地位を不動のものとしました。

主な歴代トーマスカントル

バッハ以前にも、またバッハ以後にも、多くの優れた音楽家がトーマスカントルを務めています。主な歴代トーマスカントルとしては、以下のような人物が挙げられます。

ゼトゥス・カルヴィジウス（1594年 - 1615年）
ヨハン・ヘルマン・シャイン（1616年 - 1630年）
ヨハン・シェッレ（1677年 - 1701年）
ヨハン・クーナウ（1701年 - 1722年）
ヨハン・フリードリヒ・ドーレス（1756年 - 1789年）
ヨハン・アダム・ヒラー（1789年 - 1800年）
ゴットフリート・ヴァイニング（1823年 - 1842年）
カール・シュトラウベ（1918年 - 1940年）
ギュンター・ラミン（1940年 - 1956年）
クルト・トーマス（1957年 - 1961年）
エアハルト・マウエルスベルガー（1962年 - 1971年）
ハンス＝ヨアヒム・ロッチュ（1972年 - 1991年）
ゲオルク・クリストフ・ビラー（1992年 - 2015年）
ゴットホルト・シュヴァルツ（2016年 - 2021年）
* アンドレアス・ライゼ（2021年 - ）

これらの音楽家たちは、それぞれの時代において聖トーマス教会の音楽を支え、ライプツィヒの音楽文化の発展に貢献しました。

その他の関係者

カール・リヒターは、ライプツィヒ音楽大学でシュトラウベとラミンに師事し、1949年から1951年まで聖トーマス教会のオルガニストを務めました。

トーマスカントルは、単なる音楽監督ではなく、ライプツィヒの音楽文化を象徴する存在です。その歴史と伝統は、今日まで受け継がれ、未来へと繋がっています。

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