トーマス・ヘンダーソン

トーマス・ヘンダーソン：ケンタウルス座α星の年周視差を測定した天文学者

トーマス・ヘンダーソン（Thomas James Henderson, 1798年12月28日 - 1844年11月23日）は、スコットランド出身の天文学者であり、太陽に最も近い恒星であるケンタウルス座α星の年周視差を測定したことで、その名を歴史に刻みました。彼はまた、初代スコットランド王室天文官という重要な役職も務めました。

生い立ちと初期のキャリア

ヘンダーソンはスコットランドのダンディーで生まれ、当初は法律を学びました。しかし、彼は天文学と数学に深い関心を持ち、趣味としてこれらの分野の研究に没頭しました。特に、月の掩蔽を利用して経度を求める方法を考案したことが、彼が天文学の道に進むきっかけとなりました。

この業績が、当時イギリス海軍の『天文年鑑』発行の監督官であったトーマス・ヤングの目に留まりました。ヤングはヘンダーソンの才能を高く評価し、自身の死後、後任としてヘンダーソンを推薦する手紙を残しました。この推薦が、ヘンダーソンがプロの天文学者としてキャリアをスタートさせる上で重要な役割を果たしました。

喜望峰での観測

1832年、ヘンダーソンは南アフリカの喜望峰にある天文台で観測者としての職を得ました。1832年4月から1833年5月にかけて、彼は多くの星の観測を行い、その中にはケンタウルス座α星も含まれていました。この観測が、後に彼がケンタウルス座α星の年周視差を測定する上で重要な基礎データとなりました。

年周視差の測定競争

1830年代の天文学界では、年周視差を観測し、恒星までの距離を正確に求めることが大きな関心事でした。ヘンダーソンは、太陽系に最も近いケンタウルス座α星を測定することで、この競争において有利な立場にありました。彼はイギリスに帰国後、観測データを分析し、ケンタウルス座α星までの距離を3.25光年と結論付けました。これは実際の距離よりも約30%小さい値でしたが、当時としては画期的な成果でした。

しかし、ヘンダーソンは自身の測定装置に対する信頼度が低かったため、結果の発表を躊躇していました。その間に、1838年、フリードリッヒ・ベッセルがはくちょう座61番星の年周視差を測定し、その距離を10.4光年（実際の距離よりも約10%小さい）と発表しました。これにより、最初の年周視差の発見者という栄誉はベッセルのものとなりました。

ヘンダーソンはその後、1839年に自らの観測結果を発表しました。彼の測定はベッセルに先を越されましたが、ケンタウルス座α星の距離を初めて測定したという事実とその精度は、天文学史において重要な功績として認められています。

初代スコットランド王室天文官

1834年、ヘンダーソンは初代スコットランド王室天文官に任命されました。この役職は、彼の天文学における知識と業績を高く評価したことを示すものであり、彼のキャリアにおける重要な節目となりました。彼はこの職務を通じて、スコットランドにおける天文学の発展に貢献しました。

ヘンダーソンの遺産

トーマス・ヘンダーソンは、ケンタウルス座α星の年周視差を測定しただけでなく、天文学分野において重要な貢献をしました。彼の業績は、後の天文学研究の基礎となり、宇宙の理解を深める上で大きな役割を果たしました。小惑星 (3077) のヘンダーソンは、彼にちなんで命名され、その功績は現在も語り継がれています。

彼の生涯と業績は、天文学の発展史において重要な一章を刻んでおり、後世の研究者たちに大きな影響を与え続けています。

関連項目

マニュエル・ジョンソン
18世紀生まれの天文学者

脚注

(省略)

外部リンク

Thomas Henderson（英語） - Astronomical Society of Edinburgh - journal 38
* Henderson, Mr Thomas (astronomy)（英語） - S2A3 Biographical Database of Southern African Science

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