ドイツ・メルヘン街道

ドイツ・メルヘン街道：グリム童話の世界へ

ドイツ・メルヘン街道（Deutsche Märchenstraße）は、グリム兄弟の童話や伝説にゆかりのある場所を繋ぐ、全長約600kmのドイツ観光街道です。ヘッセン州ハーナウを起点に、ブレーメン、そしてブレーマーハーフェンへと至るルートは、数々の魅力的な街や村々を通過します。単なる道路ではなく、70以上の街々が参加し、歴史的な道筋を整備して誕生した観光ルートです。1975年の組織化以来、多くの観光客を魅了し続けています。

旅の始まり：ハーナウ

街道の出発点、ハーナウはグリム兄弟の生誕の地です。旧市庁舎前のマルクト広場には、グリム兄弟の銅像が立ち、その基台には「ドイツ・メルヘン街道の起点」と記されています。兄弟の足跡を辿る旅の始まりにふさわしい場所と言えるでしょう。

グリム兄弟の軌跡：シュタイナウ、マールブルク、カッセル

ハーナウから続く旅路では、グリム兄弟が少年時代を過ごしたシュタイナウを訪れます。グリム家の歴史を伝えるグリム記念博物館（旧地方裁判所）は必見です。シュタイナウは、ゲーテ街道とドイツ木組みの家街道にも含まれており、歴史と文化が凝縮された街です。

さらに旅を進めると、グリム兄弟が学んだマールブルク大学があります。兄ヤーコプと弟ヴィルヘルムは、この地で法学を学びながら、民話や伝説、民謡にも深く関わるようになります。この地での出会いや経験が、後のグリム童話へと繋がる重要な転換期となりました。マールブルクは、宗教改革の歴史にも深く関わる街でもあります。

カッセルは、メルヘン街道の中心都市であり、グリム兄弟の生活と深く関わりのある街です。少年時代をシュタイナウで過ごした後、グリム兄弟はカッセルで伯母に引き取られ、中等教育を受けました。グリム兄弟の母親もカッセルに移り住んでおり、兄弟の生活の拠点となった地です。現在も、ヴィルヘルム・ヘーエ宮殿やヘーヴェン・ブルク城といった歴史的建造物が残されています。

多様なルートと魅力的な街並み

カッセルからは、「ホレのおばさん」ルートと「いばら姫」ルートの2つのルートに分岐します。それぞれのルートには、グリム童話にちなんだ場所や、魅力的な街並みが点在しています。

「ホレのおばさん」ルートでは、ゲッティンゲン（街としては加盟していないものの、Göttinger Märchenland e.V.という協会が加盟）など、グリム兄弟とゆかりのある場所を訪れることができます。「いばら姫」ルートでは、『いばら姫』の舞台とされるザーバブルク城があるホーフガイスマーなどが魅力です。ハン・ミュンデンは、フルダ川とヴェラ川が合流する美しい街として有名です。

2つのルートはヘクスター付近で合流した後、童話『ミュンヒハウゼンのほら男爵』の舞台となったボーデンヴェルダーや、『ハーメルンの笛吹き男』で有名なハーメルンといった、伝説の残る街を通り過ぎます。

街道最後の目的地：ブレーメンとブレーマーハーフェン

街道の終着点は、ブレーメンです。『ブレーメンの音楽隊』で知られる街ですが、実は物語の登場人物たちはブレーメンには到着しません。それでも、ブレーメンは歴史的なハンザ同盟都市として栄え、現在もドイツ屈指の都市として発展を続けています。

ブレーマーハーフェンはブレーメンの外港として栄えた港町であり、街道の旅のフィナーレを飾るにふさわしい場所です。北海に面したこの街には、クラバウターマンという船の精の伝説も残されています。ブレーメンの手前からは、ブクステフーデへ向かうルートも分岐しており、『ウサギとハリネズミ』の舞台となった町を訪れることもできます。

まとめ

ドイツ・メルヘン街道は、グリム童話の世界観を肌で感じられる、魅力的な観光ルートです。グリム兄弟の生誕地から、彼らの童話にまつわる様々な場所、そしてドイツの歴史と文化を感じることができる街々を巡る旅は、忘れられない思い出となるでしょう。それぞれの街で、歴史や文化、そしてグリム童話の世界に浸りながら、ドイツの豊かな魅力を堪能することができます。

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